GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『野分』
現代語化
「それじゃ具合でも悪いんですか」
「大したことないと思うんですけど、周りに勧められて」
「うん。具合悪ければ、行けばいいですよ。いつ? 明日ですか。じゃあまあゆっくり話しましょうか。――今はちょっと用事を済ませるので」
「それで、すみませんけど――さっき言った事情で、少し待っててもらえないでしょうか」
「それは待ちたいんですけど、こっちの都合もあって」
「だったら利息を上げればいいじゃないですか。利息だけ取ってもらって、元金は春まで待っててもらえないですか」
「利息は今まで通り滞りなくいただいているので、利息だけでもらえるなら、いつまでも貸しておきたいんですけど……」
「そうはいかないですか」
「せっかくのお願いだから、できればそうしたいんですけど……」
「ダメですか」
「申し訳ないですけど……」
「どうしてもダメですか」
「どうしても10万円作っていただかないと」
「今夜中にですか」
「はい、まあ、そうですね。昨日が期限でしたよね」
「期限が切れたのはわかってますよ。忘れてるわけじゃないんです。だからいろいろ探してみたんですけど、どうしても都合がつかなくて、わざわざ君のところへ使者を出したんです」
「はい、手紙は確かに拝見しました。何か本を書かれているそうで、それを本屋さんに売るまで猶予してほしいという申し込みでしたね」
「そうです」
「ところがですね、このお金の性質がですね――ただ利息を生む目的でないものでして――実は年末にはどうしても必要なんですと、お兄さんに念を押して伺ったんです。そしたらお兄さんが、いやそれは大丈夫、ほかのものなら知らないけど、弟に限ってけっして、そんな不都合はない。保証する。とおっしゃるんで、私も安心して貸したんです――今になって約束を破られると、とても困ります」
原文 (会話文抽出)
「いえ、少し転地しようかと思いまして」
「それじゃ身体でも悪いんですね」
「大した事もなかろうと思いますが、だんだん勧める人もありますから」
「うん。わるけりゃ、行くがいいですとも。いつ? あした? そうですか。それじゃまあ緩くり話したまえ。――今ちょっと用談を済ましてしまうから」
「それで、どうも御気の毒だが――今申す通りの事情だから、少し待ってくれませんか」
「それは待って上げたいのです。しかし私の方の都合もありまして」
「だから利子を上げればいいでしょう。利子だけ取って元金は春まで猶予してくれませんか」
「利子は今まででも滞りなくちょうだいしておりますから、利子さえ取れれば好い金なら、いつまででも御用立てて置きたいのですが……」
「そうはいかんでしょうか」
「せっかくの御頼だから、出来れば、そうしたいのですが……」
「いけませんか」
「どうもまことに御気の毒で……」
「どうしても、いかんですか」
「どうあっても百円だけ拵えていただかなくっちゃならんので」
「今夜中にですか」
「ええ、まあ、そうですな。昨日が期限でしたね」
「期限の切れたのは知ってるです。それを忘れるような僕じゃない。だからいろいろ奔走して見たんだが、どうも出来ないから、わざわざ君の所へ使をあげたのです」
「ええ、御手紙はたしかに拝見しました。何か御著述があるそうで、それを本屋の方へ御売渡しになるまで延期の御申込でした」
「さよう」
「ところがですて、この金の性質がですて――ただ利子を生ませる目的でないものですから――実は年末には是非入用だがと念を押して御兄さんに伺ったくらいなのです。ところが御兄さんが、いやそりゃ大丈夫、ほかのものなら知らないが、弟に限ってけっして、そんな不都合はない。受合う。とおっしゃるものですから、それで私も安心して御用立て申したので――今になって御違約でははなはだ迷惑します」