GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『野分』
現代語化
「いつまでとか考えてない。食べられればいつまでもこうしてればいいじゃない」
「すぐに『食べられれば』っておっしゃるけど、今はどうにかこうにかできてても、このままじゃそのうち食べられなくなりますよ」
「そんなに心配するのかい？」
「だって、あなたも無茶苦茶ですよね。楽に暮らせる教師の仕事は全部断っておいて、なんでも文章で食おうと意地を張るんですもの」
「その通りだよ。文章で食うつもりなんだ。お前もその気でいろ」
「食べ物が食べられれば私もそのつもりですわ。私も女房なんですから、あなたの好きなようにやりなさいとは口出しできません」
「それならそれでいいじゃない」
「だって食べられないんですもの」
「食べられるよ」
「ずいぶん言いますね。実際、教師をしていた時の方が楽だったじゃないですか。今の方はよっぽど大変です。やっぱりあなたは教師の方が上手なんです。文章を書く方は合ってないんですよ」
「よくそんなことが分かるな」
「私だけじゃなくて、お兄さんもそうおっしゃってますよ」
「お前は兄の言うことをそんなに信用してるのか」
「信用してもいいじゃないですか。お兄さんですから。それに、あんなに立派にしてらっしゃるんですもの」
「そうか」
原文 (会話文抽出)
「あなた、いつまでこうしていらっしゃるの」
「いつまでとも考はない。食えればいつまでこうしていたっていいじゃないか」
「二言目には食えれば食えればとおっしゃるが、今こそ、どうにかこうにかして行きますけれども、このぶんで押して行けば今に食べられなくなりますよ」
「そんなに心配するのかい」
「だって、あなたも、あんまり無考じゃござんせんか。楽に暮せる教師の口はみんな断っておしまいなすって、そうして何でも筆で食うと頑固を御張りになるんですもの」
「その通りだよ。筆で食うつもりなんだよ。御前もそのつもりにするがいい」
「食べるものが食べられれば私だってそのつもりになりますわ。私も女房ですもの、あなたの御好きでおやりになる事をとやかく云うような差し出口はききゃあしません」
「それじゃ、それでいいじゃないか」
「だって食べられないんですもの」
「たべられるよ」
「随分ね、あなたも。現に教師をしていた方が楽で、今の方がよっぽど苦しいじゃありませんか。あなたはやっぱり教師の方が御上手なんですよ。書く方は性に合わないんですよ」
「よくそんな事がわかるな」
「私ばかりじゃ、ありませんわ。御兄さんだって、そうおっしゃるじゃありませんか」
「御前は兄の云う事をそう信用しているのか」
「信用したっていいじゃありませんか、御兄さんですもの、そうして、あんなに立派にしていらっしゃるんですもの」
「そうか」