夏目漱石 『野分』 「さよう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『野分』

現代語化

「失礼します」
「何かご意見はありますか?」
「うーん、僕みたいなのが言っても雑誌に載るような価値はないですよ」
「いえ、大丈夫です」
「そもそもどこから聞いてきたんですか。いきなりお話しすることはできないですよ」
「社主が雑誌でよくお名前を見ていたそうです」
「いえいえ、とんでもありません」
「何でも結構ですので、少しお話してください」
「うーん」
「せっかく来たんですし」
「じゃ何か話しましょう」
「はい、お願いします」
「煩悶って言葉が最近流行ってるみたいだけど、たいていは一時的なもので、三日坊主的なことが多い。そういう煩悶は世の中がある限り続くから、問題にならないよね」
「ふん」
「でも、多くの若者が必ず一度はなって、自然と求めてしまう深刻な煩悶が一つある……」
「それは何かというと――恋だ……」
「ただ恋っていうと変に聞こえるかもしれないし、最近はあまり恋愛って言い方しないみたいだけど、この種の煩悶は大きな事実であって、事実の前には何でも頭を下げないといけないから仕方がないんだ」

原文 (会話文抽出)

「さよう」
「どうでしょう、何か御説はありますまいか」
「そうですね。あったって、僕のようなものの云う事は雑誌へ載せる価値はありませんよ」
「いえ結構です」
「全体どこから、聞いていらしったんです。あまり突然じゃ纏った話の出来るはずがないですから」
「御名前は社主が折々雑誌の上で拝見するそうで」
「いえ、どうしまして」
「何でもよいですから、少し御話し下さい」
「そうですね」
「せっかく来たものですから」
「じゃ何か話しましょう」
「はあ、どうぞ」
「いったい煩悶と云う言葉は近頃だいぶはやるようだが、大抵は当座のもので、いわゆる三日坊主のものが多い。そんな種類の煩悶は世の中が始まってから、世の中がなくなるまで続くので、ちっとも問題にはならないでしょう」
「ふん」
「しかし多くの青年が一度は必ず陥る、また必ず陥るべく自然から要求せられている深刻な煩悶が一つある。……」
「それは何だと云うと――恋である……」
「ただ恋と云うと妙に御聞きになるかも知れない。また近頃はあまり恋愛呼ばりをするのを人が遠慮するようであるが、この種の煩悶は大なる事実であって、事実の前にはいかなるものも頭を下げねばならぬ訳だからどうする事も出来ないのである」


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