夏目漱石 『吾輩は猫である』 「不用意の際に人の懐中を抜くのがスリで、不…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「スリは隙を見て人のカバンを盗み、探偵は隙を見て人の心をつかむ。泥棒は気づかれないように窓を開けて盗むし、探偵は気づかれないようにしゃべらせて本音を探る。強盗はナイフで脅して金を奪うし、探偵は脅し文句で言うことを聞かせる。だから探偵ってのはスリや泥棒や強盗と同じようなもんで、尊敬に値しない。あいつらの言うことなんて聞くもんじゃねえ」
「大丈夫っすよ。探偵が千人二千人来ても怖くありません。理学士の水島寒月が相手ですから」
「すごい根性だなあ。さすが新婚ホヤホヤだ。でも、苦沙弥。探偵がスリや泥棒や強盗と同じなら、探偵を使ってる金田ってのは何の仲間なんだよ?」
「熊坂長範みたいなもんでしょ」
「熊坂はよかったよ。そうは見えないけど実は金持ちだったんだから。でも、あいつみたいなケチで欲張りな奴だったら、いつまでたっても金持ちでいられるわけねえだろ。あいつにつかまったら大変だよ。恨まれるから、寒月気をつけてな」
「大丈夫ですよ。そんな大騒ぎするような奴じゃありませんよ。前に手を出した時にも懲りずにまた来たんだから、ボコボコにしてやりますよ」

原文 (会話文抽出)

「不用意の際に人の懐中を抜くのがスリで、不用意の際に人の胸中を釣るのが探偵だ。知らぬ間に雨戸をはずして人の所有品を偸むのが泥棒で、知らぬ間に口を滑らして人の心を読むのが探偵だ。ダンビラを畳の上へ刺して無理に人の金銭を着服するのが強盗で、おどし文句をいやに並べて人の意志を強うるのが探偵だ。だから探偵と云う奴はスリ、泥棒、強盗の一族でとうてい人の風上に置けるものではない。そんな奴の云う事を聞くと癖になる。決して負けるな」
「なに大丈夫です、探偵の千人や二千人、風上に隊伍を整えて襲撃したって怖くはありません。珠磨りの名人理学士水島寒月でさあ」
「ひやひや見上げたものだ。さすが新婚学士ほどあって元気旺盛なものだね。しかし苦沙弥さん。探偵がスリ、泥棒、強盗の同類なら、その探偵を使う金田君のごときものは何の同類だろう」
「熊坂長範くらいなものだろう」
「熊坂はよかったね。一つと見えたる長範が二つになってぞ失せにけりと云うが、あんな烏金で身代をつくった向横丁の長範なんかは業つく張りの、慾張り屋だから、いくつになっても失せる気遣はないぜ。あんな奴につかまったら因果だよ。生涯たたるよ、寒月君用心したまえ」
「なあに、いいですよ。ああら物々し盗人よ。手並はさきにも知りつらん。それにも懲りず打ち入るかって、ひどい目に合せてやりまさあ」


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