夏目漱石 『吾輩は猫である』 「そうおいでになったと、よろしい。薫風南よ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「いらっしゃったんですか、よかった。柔らかい風が南から吹いてきて、涼しくなってきました。こうしておけば大丈夫ですよ」
「おや、さすがにお茶を入れたのは偉い。まさか入れるつもりはないと思ってました。入れてくださるなら、ついて、くりゃるな八幡鐘って、こうしたらどうですか?」
「どうするもこうしてもしようがないよ。剣を天に立てて寒い――ああ、面倒だ。思い切って切ってしまえ」
「ちょっと待ってください!そこを切られたら死んでしまいます。冗談じゃありません」
「だから、さっきから言ってるじゃない。こんな所に入ってきちゃだめなんだ」
「お邪魔しました。ちょっとこの石を取ってください」
「それも待つの?」
「ついでにその隣の石も取ってくれませんか?」
「図々しいな」
「Do you see the boy か。――僕たちって友達じゃないですか。そんな気難しいこと言わずに、取ってくれたらいいのに。生死の関わる時ですよ。さあ、さあって花道から駆け出してくるところなのに」
「そんなこと僕は知りません」
「知らなくてもいいから、どいてください」
「君、さっきからもう6回も待ったって言ってません?」
「記憶力がいいですね。今後はずっと長く待ちますよ。だからちょっとどいてくれって言ってるんです。君も頑固だな。座禅でも組めば、ちょっとは物わかりよくなりそうなのに」
「でもこの石を取らなきゃ、僕の方が負けそうなんです……」
「君って最初から負けてもいいスタイルじゃないか」
「僕は負けてもいいけど、君には勝ちたくない」
「変わった考えだなぁ。相変わらず泰然自若として落雷を放ってますね」
「泰然自若じゃない、電光石火だよ。君の言い方が逆」
「ははは、もうだいたい逆になってもいい頃だとは思ってたけど、やはり正しいところがありますね。それじゃあ諦めるしかないかな」
「生死は重大なこと、無常は迅速、諦めます」
「アーメン」

原文 (会話文抽出)

「そうおいでになったと、よろしい。薫風南より来って、殿閣微涼を生ず。こう、ついでおけば大丈夫なものだ」
「おや、ついだのは、さすがにえらい。まさか、つぐ気遣はなかろうと思った。ついで、くりゃるな八幡鐘をと、こうやったら、どうするかね」
「どうするも、こうするもないさ。一剣天に倚って寒し――ええ、面倒だ。思い切って、切ってしまえ」
「やや、大変大変。そこを切られちゃ死んでしまう。おい冗談じゃない。ちょっと待った」
「それだから、さっきから云わん事じゃない。こうなってるところへは這入れるものじゃないんだ」
「這入って失敬仕り候。ちょっとこの白をとってくれたまえ」
「それも待つのかい」
「ついでにその隣りのも引き揚げて見てくれたまえ」
「ずうずうしいぜ、おい」
「Do you see the boy か。――なに君と僕の間柄じゃないか。そんな水臭い事を言わずに、引き揚げてくれたまえな。死ぬか生きるかと云う場合だ。しばらく、しばらくって花道から馳け出してくるところだよ」
「そんな事は僕は知らんよ」
「知らなくってもいいから、ちょっとどけたまえ」
「君さっきから、六返待ったをしたじゃないか」
「記憶のいい男だな。向後は旧に倍し待ったを仕り候。だからちょっとどけたまえと云うのだあね。君もよッぽど強情だね。座禅なんかしたら、もう少し捌けそうなものだ」
「しかしこの石でも殺さなければ、僕の方は少し負けになりそうだから……」
「君は最初から負けても構わない流じゃないか」
「僕は負けても構わないが、君には勝たしたくない」
「飛んだ悟道だ。相変らず春風影裏に電光をきってるね」
「春風影裏じゃない、電光影裏だよ。君のは逆だ」
「ハハハハもうたいてい逆かになっていい時分だと思ったら、やはりたしかなところがあるね。それじゃ仕方がないあきらめるかな」
「生死事大、無常迅速、あきらめるさ」
「アーメン」


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