夏目漱石 『吾輩は猫である』 「実はその……困った事になっちまって……」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「あの、実は……困ったことになっちゃって……」
「何?」
「何って、すごく困ってるから、来たんです」
「だからさ、何が困ってるの?」
「そんなことするつもりはなかったんですけど、浜田が借せ借せって言うから……」
「浜田って浜田平助?」
「そうです」
「浜田に下宿料でも貸したの?」
「何そんなの貸してませんよ」
「じゃあ何貸したの?」
「名前を貸したんです」
「浜田が君の名前を借りて何をしたの?」
「ラブレターを送ったんです」
「何を送った?」
「だから、名前だけ使わせてくれって、投函役になってくれって言ったんです」
「なんだかわかりづらいな。一体誰が何をしたの?」
「ラブレターを送ったんです」
「ラブレターを送った?誰に?」
「だから、言いづらいって言ってるんです」
「じゃ君が、どこかの女にラブレターを送ったの?」
「違います、僕じゃないんです」
「浜田が送ったの?」
「浜田でもありません」
「じゃ誰が送ったの?」
「誰だか分かりません」
「全然分かりません?」
「名前だけは僕なんです」
「名前だけは君の名前だって、何のことだかさっぱり分かりません。もっとちゃんと話してくれませんか?そもそもそのラブレターを受け取った相手は誰?」
「金田って向かいの横丁にいる女です」
「あそこの金田って実業家?」
「そうです」
「で、名前だけ貸したってどういうこと?」
「あそこの娘がハイカラで生意気だからラブレターを送ったんです。――浜田が名前がないとダメだって言うから、君の名前をかけって頼んだんですけど、僕の名前じゃつまらない。古井武右衛門の方がいいって――それで、結局僕の名を貸しちゃったんです」
「で、君はあそこの娘を知ってるの?付き合いでもあるの?」
「付き合いも何もありません。顔も見たことありません」
「無茶苦茶だな。顔も知らない人にラブレターなんて、どういうつもりで、そんなことをしたの?」
「みんながあいつは生意気で偉そうにしてるって言うから、からかってやろうと思ったんです」
「ますます無茶苦茶だな。じゃ君の名前を堂々と書いて送ったんだ?」
「そうです、文章は浜田が書いたんです。僕が名前を貸して遠藤が夜あそこの家まで行って投函してきました」
「じゃ3人でやったんだね」
「そうです、でも、後で考えると、もしバレて退学になったりしたら大変だって思って、すごく心配して2〜3日は眠れなくて、何だかぼーっとしてしまいました」
「そりゃとんでもない馬鹿なことをしたもんだ。それで『文明中学2年生 古井武右衛門』とか書いたの?」
「いいえ、学校の名前は書いてません」
「学校の名前を書いてないだけまあよかった。これで学校の名前が出てたら大変だった。文明中学の名誉に関わるよ」
「どうでしょう退学になるでしょうか」
「なるだろうな」
「先生、僕のお父さんはすごく厳しくて、しかもお母さんが継母だから、もし退学になったりしたら、僕困っちゃいます。本当に退学になるでしょうか」
「だから滅多な真似をするなって」
「するつもりはなかったんですけど、ついやってしまったんです。退学にならないようにできませんか」

原文 (会話文抽出)

「実はその……困った事になっちまって……」
「何が?」
「何がって、はなはだ困るもんですから、来たんです」
「だからさ、何が困るんだよ」
「そんな事をする考はなかったんですけれども、浜田が借せ借せと云うもんですから……」
「浜田と云うのは浜田平助かい」
「ええ」
「浜田に下宿料でも借したのかい」
「何そんなものを借したんじゃありません」
「じゃ何を借したんだい」
「名前を借したんです」
「浜田が君の名前を借りて何をしたんだい」
「艶書を送ったんです」
「何を送った?」
「だから、名前は廃して、投函役になると云ったんです」
「何だか要領を得んじゃないか。一体誰が何をしたんだい」
「艶書を送ったんです」
「艶書を送った?¨に?」
「だから、話しにくいと云うんです」
「じゃ君が、どこかの女に艶書を送ったのか」
「いいえ、僕じゃないんです」
「浜田が送ったのかい」
「浜田でもないんです」
「じゃ誰が送ったんだい」
「誰だか分らないんです」
「ちっとも要領を得ないな。では誰も送らんのかい」
「名前だけは僕の名なんです」
「名前だけは君の名だって、何の事だかちっとも分らんじゃないか。もっと条理を立てて話すがいい。元来その艶書を受けた当人はだれか」
「金田って向横丁にいる女です」
「あの金田という実業家か」
「ええ」
「で、名前だけ借したとは何の事だい」
「あすこの娘がハイカラで生意気だから艶書を送ったんです。――浜田が名前がなくちゃいけないって云いますから、君の名前をかけって云ったら、僕のじゃつまらない。古井武右衛門の方がいいって――それで、とうとう僕の名を借してしまったんです」
「で、君はあすこの娘を知ってるのか。交際でもあるのか」
「交際も何もありゃしません。顔なんか見た事もありません」
「乱暴だな。顔も知らない人に艶書をやるなんて、まあどう云う了見で、そんな事をしたんだい」
「ただみんながあいつは生意気で威張ってるて云うから、からかってやったんです」
「ますます乱暴だな。じゃ君の名を公然とかいて送ったんだな」
「ええ、文章は浜田が書いたんです。僕が名前を借して遠藤が夜あすこのうちまで行って投函して来たんです」
「じゃ三人で共同してやったんだね」
「ええ、ですけれども、あとから考えると、もしあらわれて退学にでもなると大変だと思って、非常に心配して二三日は寝られないんで、何だか茫やりしてしまいました」
「そりゃまた飛んでもない馬鹿をしたもんだ。それで文明中学二年生古井武右衛門とでもかいたのかい」
「いいえ、学校の名なんか書きゃしません」
「学校の名を書かないだけまあよかった。これで学校の名が出て見るがいい。それこそ文明中学の名誉に関する」
「どうでしょう退校になるでしょうか」
「そうさな」
「先生、僕のおやじさんは大変やかましい人で、それにお母さんが継母ですから、もし退校にでもなろうもんなら、僕あ困っちまうです。本当に退校になるでしょうか」
「だから滅多な真似をしないがいい」
「する気でもなかったんですが、ついやってしまったんです。退校にならないように出来ないでしょうか」


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