夏目漱石 『吾輩は猫である』 「アハハハ君は刑事を大変尊敬するね。つねに…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「ははは、君は刑事をすごく尊敬してるね。いつもあそこまで謙虚に接するのは立派だけど、君が特別巡査にだけ丁寧なのは困るよ」
「だってわざわざ教えてくれたんだから」
「教えてくれたとはいえ、あれは仕事だよ。普通に対応すれば十分だよ」
「でもただの仕事じゃないよ」
「もちろんただの仕事じゃないよ。探偵って偉そうな仕事でしょ。普通の仕事より下だよ」
「そんなこと言うと、痛い目に遭うよ」
「ははは、じゃあ刑事の悪口はやめよう。でも刑事を尊敬するのはまだしも、泥棒まで尊敬するなんて、びっくりだよ」
「誰が泥棒を尊敬するかって」
「君がしたじゃない」
「僕が泥棒と仲良しになんかあるわけないよ」
「あるわけないって、君、泥棒にお辞儀したじゃん」
「いつ?」
「さっき並んでお辞儀したじゃないか」
「冗談言うなよ。あれは刑事だよ」
「刑事がそんななりをするわけないよ」
「刑事だからそんななりをするんじゃないの?」
「頑固だね」
「君こそ頑固だ」
「そもそも、刑事が人の家を訪ねてきて懐手して突っ立ってるなんてあるわけないよ」
「刑事だって懐手しないとは限らないでしょ」
「あんな勢いで乗り込んできては驚くでしょ。君がお辞儀してる間もずっと立ってたんだよ」
「刑事ならそんなこともできるんじゃないかな」
「なんだか自信満々だね。いくら言っても聞かないね」
「聞かないよ。君は口先だけで『泥棒だ泥棒だ』と言ってるだけで、その泥棒が侵入するところなんて見てないでしょ。ただそう思って独りよがりに強がってるだけなんだよ」

原文 (会話文抽出)

「アハハハ君は刑事を大変尊敬するね。つねにああ云う恭謙な態度を持ってるといい男だが、君は巡査だけに鄭寧なんだから困る」
「だってせっかく知らせて来てくれたんじゃないか」
「知らせに来るったって、先は商売だよ。当り前にあしらってりゃ沢山だ」
「しかしただの商売じゃない」
「無論ただの商売じゃない。探偵と云ういけすかない商売さ。あたり前の商売より下等だね」
「君そんな事を云うと、ひどい目に逢うぜ」
「ハハハそれじゃ刑事の悪口はやめにしよう。しかし刑事を尊敬するのは、まだしもだが、泥棒を尊敬するに至っては、驚かざるを得んよ」
「誰が泥棒を尊敬したい」
「君がしたのさ」
「僕が泥棒に近付きがあるもんか」
「あるもんかって君は泥棒にお辞儀をしたじゃないか」
「いつ?」
「たった今平身低頭したじゃないか」
「馬鹿あ云ってら、あれは刑事だね」
「刑事があんななりをするものか」
「刑事だからあんななりをするんじゃないか」
「頑固だな」
「君こそ頑固だ」
「まあ第一、刑事が人の所へ来てあんなに懐手なんかして、突立っているものかね」
「刑事だって懐手をしないとは限るまい」
「そう猛烈にやって来ては恐れ入るがね。君がお辞儀をする間あいつは始終あのままで立っていたのだぜ」
「刑事だからそのくらいの事はあるかも知れんさ」
「どうも自信家だな。いくら云っても聞かないね」
「聞かないさ。君は口先ばかりで泥棒だ泥棒だと云ってるだけで、その泥棒がはいるところを見届けた訳じゃないんだから。ただそう思って独りで強情を張ってるんだ」


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