夏目漱石 『吾輩は猫である』 「仰せの通り方今の女生徒、令嬢などは自尊自…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「おっしゃる通り、今の女子生徒とかお嬢さん方は、自信に満ち溢れていて、男子にも負けないところがあって素晴らしいです。僕の近所の女学校の生徒なんてすごいんですよ。半袖を着て鉄棒にぶら下がってるから感心します。僕は2階の窓から彼女たちの体操を見るたびに古代ギリシャの女性を思い出します」
「またギリシャですか?」
「どうも美しいものには大抵ギリシャの要素が含まれてるから仕方がない。美学者とギリシャは絶対に切り離せません。――特に、あの色黒の女子生徒が熱心に体操してる様子を見ると、僕はいつもアグノーディケの物語を思い出します」
「また難しい名前が出てきましたね」
「アグノーディケはすごい女性ですよ。僕は本当に感心しました。当時、アテネでは法律で女性が産婆をすることが禁止されていました。不便なことですよね。アグノーディケもその不便さを実感していたでしょう」
「アグノーディケって何ですか?」
「女性です、名前です。この女性はよく考えた結果、女性が産婆になれないのは残念で不便すぎる、何とかして産婆になりたい、産婆になる方法はないだろうかと考えて3日間もじっと悩みました。ちょうど3日目の夜明けに、隣の家で赤ちゃんが生まれる泣き声が聞こえて、ひらめきました。早速、長い髪を切って男性の服を着て、ヒエロフィラスの講義を聴きに行きました。なんとか講義を聞き終えて、もう大丈夫だろうとなってついに産婆を開業しました。奥さん、流行りましたよ。あちこちで赤ちゃんが生まれて、全部アグノーディケの世話なので大儲かりでした。ところが、人間万事塞翁が馬、転んでもただでは起きません。ついてないことに、この秘密がばれてしまい、とうとう法律違反で捕まってしまいました」
「まるで講釈みたいですね」
「面白いでしょう。ところが、アテネの女性たちが全員連名で嘆願書を出したので、当時の太守も断ることができず、ついにアグノーディケは釈放され、女性でも産婆になることは自由になりました」
「よくいろいろ知ってますね、感心です」
「ええ、だいたいは知ってますよ。知らないのは自分のバカなところくらいで。でも、それも何となく知ってます」
「ホホホホ、面白い話ですね……」

原文 (会話文抽出)

「仰せの通り方今の女生徒、令嬢などは自尊自信の念から骨も肉も皮まで出来ていて、何でも男子に負けないところが敬服の至りだ。僕の近所の女学校の生徒などと来たらえらいものだぜ。筒袖を穿いて鉄棒へぶら下がるから感心だ。僕は二階の窓から彼等の体操を目撃するたんびに古代希臘の婦人を追懐するよ」
「また希臘か」
「どうも美な感じのするものは大抵希臘から源を発しているから仕方がない。美学者と希臘とはとうてい離れられないやね。――ことにあの色の黒い女学生が一心不乱に体操をしているところを拝見すると、僕はいつでも Agnodice の逸話を思い出すのさ」
「またむずかしい名前が出て来ましたね」
「Agnodice はえらい女だよ、僕は実に感心したね。当時亜典の法律で女が産婆を営業する事を禁じてあった。不便な事さ。Agnodice だってその不便を感ずるだろうじゃないか」
「何だい、その――何とか云うのは」
「女さ、女の名前だよ。この女がつらつら考えるには、どうも女が産婆になれないのは情けない、不便極まる。どうかして産婆になりたいもんだ、産婆になる工夫はあるまいかと三日三晩手を拱いて考え込んだね。ちょうど三日目の暁方に、隣の家で赤ん坊がおぎゃあと泣いた声を聞いて、うんそうだと豁然大悟して、それから早速長い髪を切って男の着物をきて Hierophilus の講義をききに行った。首尾よく講義をきき終せて、もう大丈夫と云うところでもって、いよいよ産婆を開業した。ところが、奥さん流行りましたね。あちらでもおぎゃあと生れるこちらでもおぎゃあと生れる。それがみんな Agnodice の世話なんだから大変儲かった。ところが人間万事塞翁の馬、七転び八起き、弱り目に祟り目で、ついこの秘密が露見に及んでついに御上の御法度を破ったと云うところで、重き御仕置に仰せつけられそうになりました」
「まるで講釈見たようです事」
「なかなか旨いでしょう。ところが亜典の女連が一同連署して嘆願に及んだから、時の御奉行もそう木で鼻を括ったような挨拶も出来ず、ついに当人は無罪放免、これからはたとい女たりとも産婆営業勝手たるべき事と云う御布令さえ出てめでたく落着を告げました」
「よくいろいろな事を知っていらっしゃるのね、感心ねえ」
「ええ大概の事は知っていますよ。知らないのは自分の馬鹿な事くらいなものです。しかしそれも薄々は知ってます」
「ホホホホ面白い事ばかり……」


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