夏目漱石 『吾輩は猫である』 「御嬢様、旦那様と奥様が呼んでいらっしゃい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「お嬢さん、旦那様と奥様が呼んでますよ」
「知らない」
「ちょっと用があるから嬢を呼んで来いって」
「うるさいね。知らないってば」
「水島寒月さんのことで用事があるそうですよ」
「寒月でも水月でも知らないよ。大嫌い。糸瓜が戸惑ってるような顔して」
「おや。いつ束髪にしたの?」
「今日」
「生意気だね。小間使のくせに」
「新しい半襟もつけたでしょ?」
「えへへ。こないだお嬢さんからいただいたので、もったいなさすぎてしまってましたが、今までのやつが汚れたのでつけました」
「いつそんなものあげたの?」
「今年の正月、白木屋に行った時に、お買いになったでしょ?鶯茶色に相撲の番付が染め出されてた。地味すぎるからいらないって言って私にくれましたよ」
「あらまぁ。よく似合うわね。悔しいわ」
「ありがとうございます」
「褒めたわけじゃないよ。悔しいの」
「へぇ?」
「そんなによく似合うのに、なんで黙って受け取ったの?」
「へぇ?」
「あなたに似合うくらいだから、私にも似合うに違いないじゃない」
「きっとよく似合いますよ」
「似合うって分かってるのに、なぜ言わないの?それで平気でつけてるんだから、いじわる」
「富子さん、富子さん」
「はい」

原文 (会話文抽出)

「御嬢様、旦那様と奥様が呼んでいらっしゃいます」
「知らないよ」
「ちょっと用があるから嬢を呼んで来いとおっしゃいました」
「うるさいね、知らないてば」
「……水島寒月さんの事で御用があるんだそうでございます」
「寒月でも、水月でも知らないんだよ――大嫌いだわ、糸瓜が戸迷いをしたような顔をして」
「おや御前いつ束髪に結ったの」
「今日」
「生意気だねえ、小間使の癖に」
「そうして新しい半襟を掛けたじゃないか」
「へえ、せんだって御嬢様からいただきましたので、結構過ぎて勿体ないと思って行李の中へしまっておきましたが、今までのがあまり汚れましたからかけ易えました」
「いつ、そんなものを上げた事があるの」
「この御正月、白木屋へいらっしゃいまして、御求め遊ばしたので――鶯茶へ相撲の番附を染め出したのでございます。妾しには地味過ぎていやだから御前に上げようとおっしゃった、あれでございます」
「あらいやだ。善く似合うのね。にくらしいわ」
「恐れ入ります」
「褒めたんじゃない。にくらしいんだよ」
「へえ」
「そんなによく似合うものをなぜだまって貰ったんだい」
「へえ」
「御前にさえ、そのくらい似合うなら、妾しにだっておかしい事あないだろうじゃないか」
「きっとよく御似合い遊ばします」
「似あうのが分ってる癖になぜ黙っているんだい。そうしてすまして掛けているんだよ、人の悪い」
「富子や、富子や」
「はい」


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