GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』
現代語化
「そのとおりです。それから第2は、ロープの一方をさっきと同じように柱に結んで、もう一方も最初から天井に高く吊るすんです。そしてその高いロープから何本かの別のロープを下げて、それに結び目の輪っかと付けた女の首を入れておいて、いざというときに女の足台を取りはずす仕組みなんです」
「例えて言うと、縄のれんの先端に提灯玉を吊るしたような感じと思えば間違いないだろう」
「提灯玉ってどんな玉なのか見たことがないので何とも言えませんが、もしあるとすればそのあたりだと思います。――それでここから力学的に、第1の場合は成立しないということを証明します」
「面白いな」
「うん、面白い」
「まず、女が同じ高さに吊るされると仮定します。また、一番地面に近い2人の女の首と首をつないでいるロープを水平と仮定します。そこでα<small><sup>1</sup></small>α<small><sup>2</sup></small>……α<small><sup>6</sup></small>をロープが水平線とつくる角度とし、T<small><sup>1</sup></small>T<small><sup>2</sup></small>……T<small><sup>6</sup></small>をロープの各部分が受ける力とし、T<small><sup>7</sup></small>=Xはロープの一番低い部分の受ける力とします。Wは女の体重とご理解ください。どうですか、わかりましたか?」
「大体わかった」
「さて、多角形に関する平均性理論によると、次の12の方程式が成り立ちます。T<small><sup>1</sup></small>cosα<small><sup>1</sup></small>=T<small><sup>2</sup></small>cosα<small><sup>2</sup></small>…… (1) T<small><sup>2</sup></small>cosα<small><sup>2</sup></small>=T<small><sup>3</sup></small>cosα<small><sup>3</sup></small>…… (2) ……]」
「方程式はそれくらいで十分だろう」
「実はこの式が演説の肝なんですけど」
「それじゃ、肝だけは後でじっくり聞くことにしようじゃないか」
「この式を省略してしまうと、せっかくの力学的研究が台無しになってしまうんですけど……」
「そんな遠慮はいらないから、どんどん省略してくれ……」
「それではおっしゃる通り、無理ですが省略しましょう」
「それがいい」
原文 (会話文抽出)
「つまり西洋洗濯屋のシャツのように女がぶら下ったと見れば好いんだろう」
「その通りで、それから第二は縄の一端を前のごとく柱へ括り付けて他の一端も始めから天井へ高く釣るのです。そしてその高い縄から何本か別の縄を下げて、それに結び目の輪になったのを付けて女の頸を入れておいて、いざと云う時に女の足台を取りはずすと云う趣向なのです」
「たとえて云うと縄暖簾の先へ提灯玉を釣したような景色と思えば間違はあるまい」
「提灯玉と云う玉は見た事がないから何とも申されませんが、もしあるとすればその辺のところかと思います。――それでこれから力学的に第一の場合は到底成立すべきものでないと云う事を証拠立てて御覧に入れます」
「面白いな」
「うん面白い」
「まず女が同距離に釣られると仮定します。また一番地面に近い二人の女の首と首を繋いでいる縄はホリゾンタルと仮定します。そこでα<small><sup>1</sup></small>α<small><sup>2</sup></small>……α<small><sup>6</sup></small>を縄が地平線と形づくる角度とし、T<small><sup>1</sup></small>T<small><sup>2</sup></small>……T<small><sup>6</sup></small>を縄の各部が受ける力と見做し、T<small><sup>7</sup></small>=Xは縄のもっとも低い部分の受ける力とします。Wは勿論女の体重と御承知下さい。どうです御分りになりましたか」
「大抵分った」
「さて多角形に関する御存じの平均性理論によりますと、下のごとく十二の方程式が立ちます。T<small><sup>1</sup></small>cosα<small><sup>1</sup></small>=T<small><sup>2</sup></small>cosα<small><sup>2</sup></small>…… (1) T<small><sup>2</sup></small>cosα<small><sup>2</sup></small>=T<small><sup>3</sup></small>cosα<small><sup>3</sup></small>…… (2) ……]」
「方程式はそのくらいで沢山だろう」
「実はこの式が演説の首脳なんですが」
「それじゃ首脳だけは逐って伺う事にしようじゃないか」
「この式を略してしまうとせっかくの力学的研究がまるで駄目になるのですが……」
「何そんな遠慮はいらんから、ずんずん略すさ……」
「それでは仰せに従って、無理ですが略しましょう」
「それがよかろう」