夏目漱石 『吾輩は猫である』 「いや失敬。今大変な名文を拝聴してトチメン…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「いや失礼。今、とんでもない名文を聞かせていただいて、イカの亡霊も退治されたところ」
「あ、そうですか」
「こないだは君の紹介で越智東風っていう人が来たよ」
「ああ、来ましたか。あの越智東風って人はすごく正直なんだけど、ちょっと変わったところがあって、迷惑かけたかもしれないけど、どうしても紹介してくれっていうから……」
「別に迷惑じゃなかったけどね……」
「うちに来ても自分の名前について何かしゃべらなかった?」
「そんな話はなかったみたいです」
「そうなんだ。あの人はどこに行っても初対面の人には自分の名前のウンチクを語りたがるクセがあるんです」
「どんなウンチク?」
「東風っていうのを音読みされるとすごく気にしちゃうんです」
「はぁ」
「『僕の名前は越智東風(こち)であって、越智(おち)じゃないんです』って必ず言うんですよ」
「変だね」
「それが文豪への憧れから来てるんです。こちって読むと『遠近』って言葉になるし、名前が韻を踏んでるってのがお気に入りなんだとか。だから東風を音読みされると、自分の苦労を無視された気がして不満を言うんです」
「なるほど、変わってるんだなぁ」

原文 (会話文抽出)

「いや失敬。今大変な名文を拝聴してトチメンボーの亡魂を退治られたところで」
「はあ、そうですか」
「先日は君の紹介で越智東風と云う人が来たよ」
「ああ上りましたか、あの越智東風と云う男は至って正直な男ですが少し変っているところがあるので、あるいは御迷惑かと思いましたが、是非紹介してくれというものですから……」
「別に迷惑の事もないがね……」
「こちらへ上っても自分の姓名のことについて何か弁じて行きゃしませんか」
「いいえ、そんな話もなかったようだ」
「そうですか、どこへ行っても初対面の人には自分の名前の講釈をするのが癖でしてね」
「どんな講釈をするんだい」
「あの東風と云うのを音で読まれると大変気にするので」
「はてね」
「私しの名は越智東風ではありません、越智こちですと必ず断りますよ」
「妙だね」
「それが全く文学熱から来たので、こちと読むと遠近と云う成語になる、のみならずその姓名が韻を踏んでいると云うのが得意なんです。それだから東風を音で読むと僕がせっかくの苦心を人が買ってくれないといって不平を云うのです」
「こりゃなるほど変ってる」


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