夏目漱石 『道草』 「まあ好かった。あの人だけはこれで片が付い…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『道草』

現代語化

「よかったあ。これであの人とはおしまいね」
「何が終わったの」
「でも、こうやって証文を取っておけばそれで大丈夫でしょ。もう来れないし、来ても無視すればいいじゃないですか」
「それは今までだって同じだよ。そうしようと思えばいつでもできたんだから」
「でも、こうやって書面を取っておくと全然違いますよ」
「安心できるの?」
「はい、安心よ。すっかり終わったんですもの」
「まだ全然終わってないよ」
「どうして?」
「終わったのは表面だけじゃないの。だからあなたは形式張った女だって言うんだよ」
「じゃあどうすれば本当に終わるの?」
「世の中に終わるなんてものはほとんどないよ。一度起こったことはいつまでも続くんだ。ただいろんな形に変わるから自分にも他の人にもわからなくなるだけだよ」
「ああ、いい子いい子。お父さんの言ってることなんて全然わかんないわね」

原文 (会話文抽出)

「まあ好かった。あの人だけはこれで片が付いて」
「何が片付いたって」
「でも、ああして証文を取って置けば、それで大丈夫でしょう。もう来る事も出来ないし、来たって構い付けなければそれまでじゃありませんか」
「そりゃ今までだって同じ事だよ。そうしようと思えば何時でも出来たんだから」
「だけど、ああして書いたものをこっちの手に入れて置くと大変違いますわ」
「安心するかね」
「ええ安心よ。すっかり片付いちゃったんですもの」
「まだなかなか片付きゃしないよ」
「どうして」
「片付いたのは上部だけじゃないか。だから御前は形式張った女だというんだ」
「じゃどうすれば本当に片付くんです」
「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ」
「おお好い子だ好い子だ。御父さまの仰ゃる事は何だかちっとも分りゃしないわね」


青空文庫現代語化 Home リスト