GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『草枕』
現代語化
「俺たちの絵はそれでいいんだ。雰囲気さえ出てりゃよ……」
「上手さと俗っぽさより、こっちの方がいい」
「ははは、まあ、そう言ってもらえると嬉しいな。ところで最近、絵描きにも博士ってあるの?」
「絵描きには博士はないよ」
「そうなんだ。こないだ、博士って人に会ったんだけど」
「へえー」
「博士って偉い人だよね」
「そうだよ。すごい人なんだって」
「絵描きにも博士があっても良さそうなのに。何でないのかな」
「そういえば、和尚さんも博士ってあっていいよね」
「ははは、そうだな。――何て名前だったっけな、こないだ会った人――名刺どこかにあるはずだけど……」
「どこで会ったの?東京?」
「いや、ここだよ。東京にはもう20年も行ってない。最近じゃ電車とかいうのができたんだって?乗ってみたくなってきたよ」
「つまらないですよ。うるさいし」
「そうか。蜀犬日は吠え、呉牛月は喘ぐって言うから、俺みたいな田舎者には合わないかもしれないな」
「合わないことはないけど、つまらないですよ」
「そうかな」
原文 (会話文抽出)
「無邪気な画ですね」
「わしらのかく画はそれで沢山じゃ。気象さえあらわれておれば……」
「上手で俗気があるのより、いいです」
「ははははまあ、そうでも、賞めて置いてもらおう。時に近頃は画工にも博士があるかの」
「画工の博士はありませんよ」
「あ、そうか。この間、何でも博士に一人逢うた」
「へええ」
「博士と云うとえらいものじゃろな」
「ええ。えらいんでしょう」
「画工にも博士がありそうなものじゃがな。なぜ無いだろう」
「そういえば、和尚さんの方にも博士がなけりゃならないでしょう」
「ハハハハまあ、そんなものかな。――何とか云う人じゃったて、この間逢うた人は――どこぞに名刺があるはずだが……」
「どこで御逢いです、東京ですか」
「いやここで、東京へは、も二十年も出ん。近頃は電車とか云うものが出来たそうじゃが、ちょっと乗って見たいような気がする」
「つまらんものですよ。やかましくって」
「そうかな。蜀犬日に吠え、呉牛月に喘ぐと云うから、わしのような田舎者は、かえって困るかも知れんてのう」
「困りゃしませんがね。つまらんですよ」
「そうかな」