夏目漱石 『草枕』 「ホホホホ解りませんか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『草枕』

現代語化

「ハハハ。わかりませんか?」
「でも若い頃はたくさん読んだんでしょ?」
「今でも若いと思ってるんですよ。哀れですね」
「そんなこと男の前で言えれば、もう年寄りですよ」
「そう言うあなたもずいぶん年を取ったんじゃないですか?そんなに年を取っても、やっぱり恋とか好きとかできものが話題になるんですか?」
「ええ、面白いんです。死ぬまで面白いんです」
「へえ。だから画家とかになれるんですね」
「まさにその通り。画家だから小説を最初から最後まで読む必要がないんです。でも、どこを読んでも面白いんです。あなたと話をするのも面白い。ここに滞在してる間は毎日話したいくらいです。あなたに惚れ込んでもいいんですよ。そうしたらなお面白い。でも、どれだけ惚れてもあなたと結婚する必要はないんです。惚れて結婚する必要があるうちは、小説を最初から最後まで読む必要があるんです」
「すると画家は薄情な惚れ方をするんですね」
「薄情じゃありません。情がない惚れ方をするんです。小説も情がなくて読むから、筋はどうでもいいんです。こうして、おみくじを引くように、ぱっと開けて開いたところをなんとなく読むのが面白いんです」
「なるほど面白そうね。じゃ、今あなたが読んでらっしゃるところをちょっと話してよ。どんな面白いことが出てくるか聞きたいから」
「話しちゃダメです。絵だって話にしちゃ価値がなくなるでしょ」
「ハハハ。それじゃ読んでください」
「英語でですか?」
「いや、日本語で」
「英語を日本語で読むのは大変ですよ」
「いいじゃないですか、情がないんですから」

原文 (会話文抽出)

「ホホホホ解りませんか」
「しかし若いうちは随分御読みなすったろう」
「今でも若いつもりですよ。可哀想に」
「そんな事が男の前で云えれば、もう年寄のうちですよ」
「そう云うあなたも随分の御年じゃあ、ありませんか。そんなに年をとっても、やっぱり、惚れたの、腫れたの、にきびが出来たのってえ事が面白いんですか」
「ええ、面白いんです、死ぬまで面白いんです」
「おやそう。それだから画工なんぞになれるんですね」
「全くです。画工だから、小説なんか初からしまいまで読む必要はないんです。けれども、どこを読んでも面白いのです。あなたと話をするのも面白い。ここへ逗留しているうちは毎日話をしたいくらいです。何ならあなたに惚れ込んでもいい。そうなるとなお面白い。しかしいくら惚れてもあなたと夫婦になる必要はないんです。惚れて夫婦になる必要があるうちは、小説を初からしまいまで読む必要があるんです」
「すると不人情な惚れ方をするのが画工なんですね」
「不人情じゃありません。非人情な惚れ方をするんです。小説も非人情で読むから、筋なんかどうでもいいんです。こうして、御籤を引くように、ぱっと開けて、開いた所を、漫然と読んでるのが面白いんです」
「なるほど面白そうね。じゃ、今あなたが読んでいらっしゃる所を、少し話してちょうだい。どんな面白い事が出てくるか伺いたいから」
「話しちゃ駄目です。画だって話にしちゃ一文の価値もなくなるじゃありませんか」
「ホホホそれじゃ読んで下さい」
「英語でですか」
「いいえ日本語で」
「英語を日本語で読むのはつらいな」
「いいじゃありませんか、非人情で」


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