谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「おや、まアちゃん、いつ来たの?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「おや、まアちゃん、いつ来たの?」
「今日来たよ。―――てっきりお前だと思って」
「おーい」
「おーい」
「誰? あそこで泳いでるの?」
「浜田だよ。―――浜田と関と中村と、4人で今日来たんだ」
「まあ、賑やかね。どこ泊まってるの?」
「いや、そんな景気いいわけじゃないんだ。暑すぎてしょうがないから、日帰りで来たのよ」
「やあ、久しぶり! どう元気だった?河合さん、最近ダンスに来ないねえ」
「そうでもないんだけど、ナオミが飽きたっていうから」
「そうなの?それはいけませんね。―――あなたたちはいつからここに?」
「2、3日前からだよ。長谷の植木屋の離れ座敷を借りてるんです」
「それはいいところね。杉崎先生の紹介?」
「そう、今月のいっぱいまで借りてるの」
「お洒落だね」
「じゃ、しばらくここにいるの?」
「でも鎌倉にもダンスはあるよ。今夜も海浜ホテルでやってるんだけど、相手がいれば行きたいんだけどな」
「いやだわ、あたし」
「こんな暑いのにダンスなんて無理よ。涼しくなったら行くわ」
「それもそうだね。ダンスは夏じゃないからね」
「おい、まアちゃん―――もう一回泳ぎに行かない?」
「やだア、疲れたから帰る。一休みして東京に帰らないと夜になっちゃうよ」
「どこに行くの?」
「何か面白いことでもあるの?」
「扇ヶ谷に関の叔父さんの別荘があるんだ。みんなでそこに行ってご馳走するって言ってるんだけど、窮屈だから飯食わずに逃げ出すつもり」
「そうなの? そんなに窮屈なの?」
「窮屈も窮屈。女中が出てきて三つ指ついてくるんだって。それじゃご馳走になっても飯が喉を通らないよ。―――ねえ、浜田、帰ろうよ。東京で何か食べようよ」

原文 (会話文抽出)

「おや、まアちゃん、いつ来たの?」
「今日来たんだよ、―――てっきりお前にちげえねえと思ったら、やっぱりそうだった」
「おーい」
「おーい」
「誰? 彼処に泳いでいるのは?」
「浜田だよ、―――浜田と関と中村と、四人で今日やって来たんだ」
「まあ、そりゃ大分賑やかだわね、何処の宿屋に泊っているの?」
「ヘッ、そんな景気のいいんじゃねえんだ。あんまり暑くって仕様がねえから、ちょっと日帰りでやって来たのよ」
「やあ、暫く! 大へん御無沙汰しちまって、―――どうです河合さん、近頃さっぱりダンスにお見えになりませんね」
「そう云う訳でもないんですが、ナオミが飽きたと云うもんだから」
「そうですか、そりゃ怪しからんな。―――あなた方はいつから此方へ?」
「つい二三日前からですよ、長谷の植木屋の離れ座敷を借りているんです」
「そりゃほんとにいい所よ、杉崎先生のお世話でもって今月一杯の約束で借りたの」
「乙う洒落てるね」
「じゃ、当分此処に居るんですか」
「だけど鎌倉にもダンスはありますよ。今夜も実は海浜ホテルにあるんだけれど、相手があれば行きたいところなんだがなア」
「いやだわ、あたし」
「この暑いのにダンスなんか禁物だわ、又そのうちに涼しくなったら出かけるわよ」
「それもそうだね、ダンスは夏のものじゃないね」
「おい、どうするいまアちゃん―――もう一遍泳いで来ようか?」
「やあだア、己あ、くたびれたからもう帰ろうや。これから行って一と休みして、東京へ帰ると日が暮れるぜ」
「これから行くって、何処へ行くのよ?」
「何か面白い事でもあるの?」
「なあに、扇ヶ谷に関の叔父さんの別荘があるんだよ。今日はみんなでそこへ引っ張って来られたんで、御馳走するって云うんだけれど、窮屈だから飯を喰わずに逃げ出そうと思っているのさ」
「そう? そんなに窮屈なの?」
「窮屈も窮屈も、女中が出て来て三つ指を衝きやがるんで、ガッカリよ。あれじゃ御馳走になったって飯が喉へ通りゃしねえや。―――なあ、浜田、もう帰ろうや、帰って東京で何か喰おうや」


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