谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「是非行って見よう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「ぜひ行こう」
「ダメよ、譲治さん!」
「そんな小心者だからダメなのよ。ダンスなんていうのは、練習ばっかりしててもうまくなるわけないよ。人前で堂々と踊ってるうちにうまくなるものよ」
「それはそうだけど、私はその、堂々としてる度胸がないから…」
「じゃあいいわ、私一人で行くから。…浜さんかお母さんでも誘って行って、踊ってやるから」
「お母さんっていうのは、前のマンドリンクラブの男でしょ?」
「うん、そうよ。あの人なんて一度も練習しないくせに、どこでも相手構わず踊るから、もうこの頃じゃすっかりうまくなっちゃったわ。譲治さんよりずっと上手よ。だから堂々としてなきゃ損よ。…ねえ、行きましょうよ。私、譲治さんと踊ってあげるわ。…ねえ、お願いだから一緒に来て!…いい子、いい子、譲治さんはほんとにいい子!」
「何着て行こうかな」
「ちょっと譲治さん、どれがいいと思う?」
「ああ、それがいいだろう」
「そうかしら?これで変じゃないかしら?」
「変だわ、なんか。私これじゃ気に入らないわ」

原文 (会話文抽出)

「是非行って見よう」
「駄目よ、譲治さんは!」
「そんな気の弱いことを云っているから駄目なのよ。ダンスなんて云うものは、稽古ばかりじゃいくらやったって上手になりッこありゃしないわよ。人中へ出てずうずうしく踊っているうちに巧くなるものよ」
「そりゃあたしかにそうだろうけれども、僕にはその、ずうずうしさがないもんだから、………」
「じゃいいわよ、あたし独りでも出かけるから。………浜さんでもまアちゃんでも誘って行って、踊ってやるから」
「まアちゃんて云うのはこの間のマンドリン倶楽部の男だろう?」
「ええ、そうよ、あの人なんか一度も稽古しないくせに何処へでも出かけて行って相手構わず踊るもんだから、もうこの頃じゃすっかり巧くなっちゃったわ。譲治さんよりずっと上手だわ。だからずうずうしくしなけりゃ損よ。………ね、いらっしゃいよ、あたし譲治さんと踊って上げるわ。………ね、後生だから一緒に来て!………好い児、好い児、譲治さんはほんとに好い児!」
「何を着て行こう」
「ちょっと譲治さん、どれがいいこと?」
「ああ、それがいいだろう」
「そうかしら? これで可笑しかないかしら?」
「変だわ、何だか。あたしこんなのじゃ気に入らないわ」


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