三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「これは何うもお店を汚しまして何とも、御迷…
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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』
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「これは申し訳ございません。お店を汚してしまいまして。これは娘なんですが、前に少しお話したように、親の仇討ちに間違いありません。詳しいことはあとで話しますが、決して迷惑はかけませんからご心配なく」
「え…あ…うん…ありがとうございます。立派なことです」
「さあ、出てこい。こっちに来い……これ、覚えてるかい?ずいぶん年を取ったね。お前が今まで生きていられたのは、神仏がないからだとずっと思っていた。この悪党め!お前の娘のおやまを、何年か前に信州の白島村で殺害して逃げたのだろう?それからお前は屋敷を出る時、七軒町の曲がり角で中根善之進を討って立ち去ったのもお前に違いない。いつも持っていた落書きの扇子が落ちていたから、確かにお前だとわかっていたんだけれども、確かな証拠がなかったのでそのままにしていた。でも、娘に討たれるなんてみっともないやつだ。もう助かる見込みはないだろう。さあ、お前も武士だろう?隠さずに、善之進を討ったのなら討ったと言え。言わなければ、五分試しでも言わせてやるぞ。さあ、言うのか?」
「殺したに間違いありません」
「お継、前から一人では手を出さないようにと言っておいたのに、よく一人であいつを討ってくれたな」
「はい、ここに来てくださった方が、私が転んで、もう殺されるというところで助けてくださったんです。どうか、この方にお父さんお礼を」
「うん、この方が……ありがとうございます」
「はは、いやもう本当におめでたいことです。私は側に立って見ていて、もう我慢ができなくなって、思いっきり一発食らわせてやったら、驚いて逃げるのをまた殴ったんです。まあいい具合に……お兄さんはこの方のお父さんなんですか?」
「ええ、ご迷惑をおかけしました。今はこういう身分ですが、前はちゃんとした家の者だったんです。腕がなければ、又市を一撃で打ち倒すなんてできないでしょう。お名前は何と仰るか?必ずちゃんとした方でしょう」
「うーん、私は見物人で」
「矢島さんって言うんですか?」
「うーん、矢島さんじゃありません。別に見たかったので、思いっきり殴っただけなんです。お兄さん、親の敵って、お父さんがいらっしゃるじゃないですか」
「いや、これは私の養女なんです。実父は湯島六丁目の糸問屋、藤屋七兵衛と言います。その親が討たれたから親の敵と言ってるんですけど、今は自分の娘にして育ててます」
「ええ、藤屋七兵衛?おい、それじゃあ、妹のお継か?」
「あらまあ!お兄さんは正太郎さんなんですか?」
「おう、正太郎だ……大きくなったな。親父は殺されたのか……ああ、高岡でか。そうか。俺は9歳の時に別れたから、顔もよく覚えてないぐらいだから、お前はなおさら覚えてないだろう。俺がここに仕事で来たとき、お前が転んだもんだから、ただの通行人に殴られてしまったんだけど、まさか親父の仇討ちの相手を殴ることになるとは……敵討ちをするってのは……何があったんだ?」
「詳しく話せば長くなりますが、前から噂には聞いていましたが、お兄さんが正太郎さんで、葛西の文吉さんのところに世話になっていたそうですね」
「ああ……彼は叔父さんで……お継、ちょっと小岩井のおばあさんのところに寄りたいから、おばあさんに俺の詫びを入れておいてくれないか。父の仇討ちの助太刀をしたとで詫びを入れておいてくれ。俺はもう腹一杯で、ばあさんも愛想尽かして寄り付かないと言ってて、俺も行く義理はないからな。土浦に行って燻ってたんだけど、そのうち瘡ができて、帰ることもできなくなって、それからやっと因幡町の棟梁のところに転がり込んだ。一人前になったけど、体が利かないからこき使われて、今日初めて手伝いに出て、それで妹に会ったってのは不思議だな。これは神様のお導きだな。もう大きくなったな、息子。小さい時に別れて知らないもんな。本当に藤屋のの娘か?おい、立ってみろ……これがお前さんの子なのか……一周回ってみろ」
「本当にこれは思わぬことで、亡くなった七兵衛殿のお導きと言われるのはごもっともです。実は私の息子、山之助という者と3年前から巡礼をしていて、長い間旅の苦しみを乗り越えて、やっと仇を討つことができました。でも、山之助は少し前に亡くなってしまいました。それで、息子の嫁だったから養子にして、私が剣術を教えました。それでどうにか刀の持ち方も覚えるようになりました。本当にこれは思わぬことで、葛西の文吉様にもお世話になりましたから、お礼に伺います。とにかく今は仇の……え、立てなくなったようだな」
「私が一太刀」
「いや、お前はお兄さんでも初太刀はダメだ。お継は7年間親の仇討ちを心に決めてきたんだから、お継が初太刀で、お前は兄さんでも後だ」
「兄さんでも、もう恥ずかしい。じゃあ後でとどめを刺してやる。こんな嬉しいことはないな……何でそんなに立って見てるんだ?向こうに行け。何だ、棒立ちかい?俺は弱虫で泣くわけねえだろ畜生め……早く片付けろ」
「何を早く片付けろって言うんです?長く苦しめてゆっくり殺すべきでしょう」
「これ、又市、覚えてるだろう?お継だ。よくも私の父を薪割りで殺して本堂の縁の下に隠して、その上に継母を連れて逃げ出したな。しかもその前に私を殺そうとして追いかけてきたよな」
「さあ、照、お前も」
「はい、お兄さんの仇、又市、覚悟しろ」
「さあ、今度は私にやらせてくれ。かわいい息子がひどい死に方をしたのもこの奴のせい、しかも娘を斬殺したのもこの奴の仕業だ。この奴め!」
「さあ、お兄さんだ」
「今度は私の番だ。この畜生、親父を殺しやがって、この畜生め」
原文 (会話文抽出)
「これは何うもお店を汚しまして何とも、御迷惑でございましょうが、これは手前娘で、先達て鳥渡お話をいたした、な、が全く親の仇討に相違ございません、委しい事は後でお話を致しますが、決して御迷惑は懸けませんから御心配なく」
「え…あ…うん…うんお立派な事でございます」
「さア是れへ出ろ、これへ参れ……これ見忘れはせぬ、大分に汝も年を取ったが此の不届者め、汝が今まで活きているのは神仏がないかと思って居た、この悪人め、汝は宜くも己の娘のおやまを、先年信州白島村に於て殺害して逐電致したな、それに汝は屋敷を出る時七軒町の曲り角で中根善之進を討って立退いたるは汝に相違ない、其の方の常々持って居た落書の扇子が落ちて居たから、確に其の方と知っては居れど、なれども確かな証がないから其の儘打捨ておかれたのであるが、少女に討たれるくらいの事だから、最早どうせ其の方助かりはしない、さア汝も武士だから隠さず善之進を討ったら討ったと云え、云わぬ時に於ては五分試しにしても云わせる、さア云わんか」
「手前殺したに相違ござらん」
「繼、予て一人で手出しをしては成らぬと云って置いたが、お前一人で此奴を宜く討ったな」
「はい此処においでなさいますお方様が、私が転びまして、もう殺されるばかりの処へ助太刀をなすって下すったので、何卒此のお方様にお父様お礼を仰しゃって」
「うん此のお方が……何うもまあ」
「はアまことに何うもお芽出度うございます、なに私は側に立っていて見兼たもんですから、ぽかり一つ極ると、驚いて逃げる所を又打殴ったんだか、まア宜い塩梅で……お前さんは此の方のお父さんで」
「えゝ何うも恐入りました、只今は然ういうお身形だが、前々は然るべきお身の上のお方と存じます、左もなくて腕がなければ中々又市を一撃にお打ちなさる事は出来ぬ事でな、えゝ御尊名は何と仰しゃるか必ず然るべきお方でございましょう」
「うーん、なに私は弥次馬で」
「矢島様と仰しゃいますか」
「うん、なに矢島様じゃアねえ、只私は見兼たからぽかり極めたので……お前さん親の敵だって親が在るじゃアねえか」
「いやこれは手前養女でござる、実父は湯島六丁目の糸問屋藤屋七兵衞と申す、その親が討たれた故に親の敵と申すので、只今では手前の娘に致して居ります」
「えゝ藤屋七兵衞、おい、それじゃア何か、妹のお繼か」
「あれまア何うも、お前は兄さんの正太郎さんでございますか」
「おゝ正太郎だ……何うも大きくなりやアがった載生、親父は殺されたか……えゝなに高岡で、然うか、己ア九才の時別れてしまったから、顔も碌そっぽう覚えやしねえくれえだから、手前は猶覚えやアしねえが、己が此処へ仕事に来ていると前へ転んだから、真の弥次馬に殴ったのが、丁度親父を殺した奴を打殴ると云うなア是が本当に仏様の引合せで、敵討をするてえのは……何う云う訳なんです」
「訳を申せば長いことでござる、予て噂に聞ましたがお前が正太郎様で、葛西の文吉殿の方に御厄介に成っていらしった」
「え……彼れは叔父で……お繼、何か小岩井のお婆さんの処え行きてえから、お婆さんに己の詫言して呉んねえ、父の敵を討つ助太刀をしたと云う廉で詫言をして呉んねえ、己アもう腹一抔借尽して、婆さんも愛想が尽きて寄せ附けねえと云うので、己も行ける義理は無えからなア、土浦へ行って燻ぶって居たが、その中に瘡は吹出す、帰る事も出来ず、それからまア漸との事て因幡町の棟梁の処え転がり込んだが、一人前出来た仕事も身体が利かねえから宰取をして、今日始めて手伝に出て、然うして妹に遇うと云うなア不思議だ、こりゃア神様のお引合せに違え無え、何うも大きく成りやアがったなア載生、幼せえ時分別れて知れやアしねえ、本当に藤屋の娘か、おい立って見や……これをお前さんのとこの子にしたのか……一廻り廻れ」
「誠に是れは思掛けないことで、何うもその死んだ七兵衞殿のお引合せと仰しゃるは御尤もなこと、実は私の忰山之助と申す者と三年前から巡礼を致して、長い間旅寝の憂苦労を重ね、漸く今日仇を討ちましたが、山之助は先達て仔細有って亡なりました、それ故に手前忰の嫁故引取り娘に致して、手前が剣術を仕込みまして、何うやら斯うやら小太刀の持ち様も覚える次第、まことに思掛けないことで、葛西の文吉様にもお世話に成りましたから、手前同道致してお詫言に参りましょうが、まア兎も角も敵の……えゝ人が立って成らぬなア」
「私が一太刀」
「いや、お前はお兄様でも初太刀は成りません、お繼は七年このかた親の仇を討ちたいと心に掛けましたから、お繼が初太刀で、お前は兄様でも後ですよ」
「兄でもからもう面目次第もねえ、じゃア後で遣っ付けやしょう、此様な嬉しい事アござえやせん……何でえ然う立って見やアがんな、彼方へ行け、何だ篦棒めえ己は弱虫で泣くのじゃアねえ此ん畜生……早く遣付けて」
「なアに早く遣っ付けろと仰しゃっても、長く苦痛をさして緩りと殺すが宜い」
「これ又市見忘れはすまい、お繼だ、よくも私のお父様を薪割で打殺して本堂の縁の下へ隠し、剰え継母を連れて立退き、また其の前に私を殺そうとして追掛けたな」
「さア/\照やお前も」
「はい、兄の敵又市覚悟をしろ」
「さア/\今度は私に遣らしてくれ、可愛い忰が不便の死を遂げたも此奴の為、また娘を斬殺したのも此奴の業、此奴め/\」
「さア兄様だ」
「今度ア私の番だ、此ん畜生め親父を殺しやアがって此ん畜生め」
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