三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「巡礼、巡礼暫く待て」…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』

現代語化

「おい、巡礼、ちょっと待てよ」
「おい、巡礼」
「へい、なんだい」
「久しぶりだなあ」
「どなたです?」
「知らないのか? 俺だよ、桑名川村にいた柳田典蔵だ。お前の姉のおかげでずいぶんひどい目に遭って、丹精してた桑名川村に居られなくなったんだ。あのときは家財や田地を売ってる暇もなくて、やっと現金だけ持って逃げた。だから桑名川村には二度と帰れないんだよ。それに、右手の甲にケガをして、その傷を縫って直すのに時間がかかった。さっき俺が寝覚を歩いていたら、お前が通るところに出くわしたから、これは変だな、なんで巡礼になってるんだと思って、あとをつけて来たんだ」
「どなたでしょうか? 人違いじゃないでしょうか? 私はそんな人じゃないですよ」
「そんなこと言ってもごまかせないよ。さっきお前の笈摺を見たら、『信州水内郡白島村、白島山之助』って書いてあるじゃないか」
「え?」
「そう書いてあるから仕方ないよ」
「いや、私はそんな人じゃありません。私は越中高岡の人で…」
「いくら隠したって無駄だよ。姿は巡礼だけど、お前がかなり金を持ってるのはわかってる。俺がお前の姉のせいでこんな姿になったんだから、代わりに金を奪って殺そうと思う。金を渡せば命だけは助けてやる。俺ってのはもともと強盗じゃなくて、最近ドロボー仲間になったんだ。こうなったのも、実はお前の兄貴たちのせいなんだよ。さあ、金を出せ」
「私はそんな人じゃないですよ。私は山之助なんて名前じゃありません。私は越中高岡の宗円寺というお寺から来た者です」
「えー、いくら隠しても無駄だよ。ぐずぐず言わずに出せよ。しつこいとぶっ倒すぞ」
「いや、私はそんな人じゃな…」
「えー、斬り殺すぞ」
「あれえ」
「ちょっと待て」

原文 (会話文抽出)

「巡礼、巡礼暫く待て」
「これ巡礼」
「はい/\/\」
「思い掛けねえ、手前久振で逢ったなア」
「はい何方でございます」
「何方もねえもんだ、己は桑名川村にいた柳田典藏だが、汝の姉のお蔭で苛い目に逢って、あれまで丹誠した桑名川村に居られないように成ったのだ、その時は家財や田地を売払って逃げる間も無いから、漸く有合せの金を持って逃げて、再び桑名川村へ帰る事も出来ぬような訳だ、その上右の手の裏へ傷を受け、その疵を縫って養生するにも長く掛ったが、先刻己が寝覚を通りかゝると汝が通るから、これは妙だ、何ういう訳で巡礼に成って出るかと思って跡を尾けて来たんだ」
「はい何方でございますか、人違いでございましょう、私は左様なものではございません」
「汝は其様なことを云って隠してもいけねえ、先刻おれが笈摺を見たら、信州水内郡白島村白島山之助と書いて有った」
「えゝ」
「さ其の通り書いて有るから仕方がねえ」
「いゝえ私は左様な者ではございません、私は越中高岡の者で」
「えゝ幾ら汝が隠したっても役に立たねえ、姿は巡礼だが、汝が余程金を持ってる事ア知ってる、さ己が汝の姉の為に斯う云う姿になった代りに金を強奪って汝を殺すのだが、金を出しゃア命は宥して遣ろう、おれは追剥をするのじゃアねえけれども、この頃では盗人仲間へ入った身の上だ、斯う成ったのも実はと云うと、汝兄弟のお蔭なんだ、さア金を出せえ」
「私は左様な者ではございません、私は其の山之助と云う者ではございません、私は越中高岡の宗円寺という寺から参りました者で」
「えゝ何と隠してもいけねえや、ぐず/\云わんでさっさと出せ、若し強情を張ればたゝんでしまうぞ」
「いゝえ私はそんな人じゃア」
「えゝ打斬ってしまうぞ」
「あれえ」
「待て」

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