三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「旦那、旦那お連れ申しました、此方へ/\、…
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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』
現代語化
「旦那、旦那、お連れしましたよ。こちらへどうぞ。ぐずぐずしてないで、姉さんにご挨拶を」
「これは申し訳ございません。何かのご祈願でいらしたところをこんなところに呼び出して、ご迷惑をおかけしてると思います。でも、ご迷惑でもお酒でも飲まれないなら食事でもお出ししたいと思って、ちょっとこちらへ。申し訳ございませんけど、お酒は飲めないので、食事を」
「いけませんよ。そんなことばかり言ってると困るな。ってか、姉さん、お酌をしてください。お酌をしますから」
「何をなさってるんですか? あなたたちは何をされてるんですか? 私もバカですが、あなたたちは一度も面識のない人に無理やりこんなところに連れてきて、嫌がってる人を引きずり込んで、人の邪魔をして、お酒を飲めって。私はお酒のお相手をするような宿屋や料理茶屋の女じゃないんですよ。あまり人を見くさったことをしないでください」
「旦那、怒らないでください……姉さん、そう言われちゃ何にもできないよ。それはそうだけど、姉さん、人の言うことを聞いてよ。この旦那は、簡単に言うと君に惚れたんだ……旦那、そっちに行って黙っててください。君は口を挟まないでおいで、黙って頭を下げてなさい……姉さん、人の言うことを聞いてよ。こないだ伯父さんに話したんだ。分かる? そしたら、お父さんがいなくて元服もせずに待ってるって言ったから、そのことを柳田さんに話したら、それはごもっともってことで。今日の柳田さんが君を呼んだのは、私の考えで、旦那が本当に感心な娘だって言うから、16年も音信不通の親父を待って、それくらい元服もせずにいるなんて、本当に孝行だって。嫁になるのはいやならいいけど、その志操に伝次とか惚れちゃうくらいじゃなかったかなと、旦那はそう思ってるんだ。本当に素晴らしいから、そうならせめてお酒を1杯飲んで、面識を持ってなれたらって。決して引きずり込んでどうこうしようっていうわけじゃないけど、君が納得して嫁になれば弟も引き取って面倒を見るし、本当に幸せだから、うんって言ったらいいじゃないか」
「なぜうんと言わないといけないんですか? 私のことは伯父に任せています」
「それは伯父さんに聞いたよ。言い訳で伯父さんに頼るっていうのはわかってるよ」
「知ってるんなら何も言わなくていいじゃないですか。私も今は浪人ではありますが、以前は武士でした。あなたたちのお酒のお相手をするような芸者や旅稼ぎの娼妓とは違います。失礼なことを知らないバカみたいな人ですね」
「あれ、それじゃ姉さん、でも、困るよ。そう言われちゃ……もう少し言い方があるはずじゃないかな。困ったな。そうなのか」
「そうなのかって考えてみてください。あなたは頼まれたかどうか知らないけど、そこにいらっしゃる方は立派な武士で、人の娘を知りもしないところに無理やり引きずり込んで、飲めない人に盃を差し上げて何をしてるんですか? あの人のことは本当にくだらなくて、私も武士の家に生まれましたが、武士はそんな乱暴なばかげた真似はしません。あまりばかげてるので愛想が尽きました。厚かましい人ですね」
「なにが厚かましいんだ。なにがくだらないんだ。いやならいやでいい。無理に嫁にしようと言ってるわけじゃないけど、私が……」
「厚かましいから厚かましいと言ったんです。手を離してください」
「離してください」
原文 (会話文抽出)
「旦那、旦那お連れ申しました、此方へ/\、ぐず/\して居てはいけねえ、姉さんに御挨拶をさ」
「これは何うも誠に、何か、御信心参りにお出での処を斯様なる処へお呼立て申して甚だ御迷惑の次第で有ろうと申した処が、何か、御迷惑でも御酒を飲らぬなれば御膳でも上げたいと思って、一寸これへ、何うも恐入ります、一寸只御酒はいけますまいから、じゃア御膳を」
「いけねえね、そんな事ばかり云って困るな、めかして居て……一寸姉さんお盃を、お酌を致しますから」
「何をなさる、お前さん方は何をなさるのでございますえ、私の様な馬鹿でございますけれども、あなた方は何もお近眤になった事もない方が無理遣にこんな処へ手を持って、厭がる者を引張込んで、人の用の妨げをして、酒を飲めなんて、私は酒のお相手をする様な宿屋や料理茶屋の女とは違います、余り人を馬鹿にした事をなさいますな」
「旦那、腹を立っちゃアいけねえ……姉さん然う云っちゃアから何うも仕様がねえ、それは然うだがね姉さん人の云う事をお聞きなさいよ、この旦那は早く言えばお前さんに惚れたんだ……旦那、黙って其方においでなせえ、お前さん口を出しちゃアいけねえ、黙って頭を叩いておいでなさい…姉さん、人の云う事をお聞きよ、此間伯父さんへ掛合ったのだ、宜いかえ、処がそれはお父さんが居ねえので元服もせずに待って居ると云うお話だから、その事を柳田さんに話すと、それは御尤だてんで、今日も柳田さんがお前さんを呼んでくれと云ったのではない、全く私の了簡で、旦那は誠に感心な娘だと云うので、どうも十六年も音信をしない親父を待って、それ程までに元服もせずに居るとは、実に孝行な事だから嫁が厭なら宜しいが、実にその志操に傳次や尚惚るじゃアねえかと斯ういう旦那の心持で、誠に尤だからそう云う事ならせめて盃の一つも献酬して、眤近に成りたいと云うので、決して引張込んで何う斯うすると云う訳じゃアないが、お前さんが得心して嫁になれば弟も引取って世話をすると云う、実に仕合せだから、うんと云ったら宜いじゃアないか」
「何をうんと云うのでございますえ、私の身の上は伯父に」
「それは伯父さんに聞いたよ、遁辞で伯父さんに托けると云う事は知ってる」
「知って居るなれば何も仰しゃらんでも宜いじゃア有りませんか、私も今は浪人しては居りますけれども、やはり以前は少々御扶持を頂きました者の娘でございます、あなた方の御酒のお相手を致すような芸者や旅稼ぎの娼妓とは違います、余りと申せば失礼を知らぬ馬鹿/\しいお方だ」
「あれ、それじゃア姉さん、だがね、困るねどうも、然うお前さん言ってしまっては……何とか云い様が有りそうなものだ、何うも困るね、左様じゃア」
「左様じゃアって考えて御覧なさい、お前さんは頼まれたか知らないが、此処にいらっしゃる方は大小を差した立派なお武家様で、人の娘を知りもしない処へ無理遣りに引摺込んで、飲めもしない者に盃をさして何うなさる、彼の方は本当に馬鹿々々しくて、私も武士の家に生れたが、武家はそんな乱暴な馬鹿な真似は為はしません、余り馬鹿な事で呆れて愛想もこそも尽果てた厚かましい人だ」
「なに厚かましいと、何だ、馬鹿々々しいとは何だ、否なら否で宜しい、無理に嫁に貰おうと云う訳ではないが、手前が……」
「厚かましいから厚かましいと申しました、袖をお放しなさいよ」
「お放しなさい」
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