三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「何じゃ、どうした」…
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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』
現代語化
「なんだ、どうしたの?」
「お梅さん、後ろの戸をしっかり閉めてね。足が泥だらけだから、この雑巾で拭くから」
「何やってんだって? 真夜中に裸足で、その格好でここに来るなんてありえるか? 迷惑な奴だなぁ。こっち来い、どうしたの?」
「ちょっと前に和尚さんに、瞽女町で芸者を買ったのに金が足りなくて十両貸してくれないかって頼んだけど、実はその金は芸者や女郎を買うためじゃなく、あの庄吉んとこで賭博が始まって負けちゃって、穴埋めするための金なのよ」
「この野郎、ひどい奴だな。出家の身で賭博するなんてけしからん! おい、何だ? そんな穴埋めの金を私に借りようとするのはどういうつもりだ?」
「それは悪いのは重々分かってんだけど、その後庄吉んとこで賭博してたら、警官が踏み込んできたの」
「ほら見ろ、大変なことになったな。寺に警官が踏み込むなんて、これ以上ない恥さらしだ! おいおい、どうしたんだ?」
「私も慌てて庭の物置に隠れて、薪の間に身を潜めてたら、庄吉って野郎が本堂の縁の下に逃げ込んだの。そしたら先に一人隠れてるのがいて、うずくまって寝てるんだ。庄吉がその奴の帯に噛み付いたそのとき、ドカドカと警官が入ってきて、庄吉の帯をつかんでズリズリ引っ張ったんだけど、庄吉が手を離さなかったから一緒に引きずり出されてきちゃった。庄吉はすぐに縛られて、それともう一人は顔を上げて髪をつかまれて起こされると、なんと……旦那さん、七兵ヱさんの死体が現れたの!」
「えーっ? ……死体? それは……どうやって出てきたの?」
「何で出てきたかなんて、あんたとお梅さんが仲良くなって、七兵ヱさんが邪魔だから殺して縁の下に隠したんでしょ? 隠さなくても良かったのに。そうじゃないの? そうでしょう? すぐ庄吉は縛られて二番町の町会所へ連れて行かれて、私は物置に隠れてたから見つからなくて、皆が出てったあとにそっと抜け出してここへ来たのよ。私がグズグズしてるとすぐに捕まるわ。捕まって殴られたら、庄吉は知らないかもしれないけど私はあんたたちがイチャついてるの知ってるから、筋は通らないけど殴られたら痛いから、実は師匠の永禅和尚はお梅さんと悪いことしてる。だから七兵ヱさんを殺して縁の下に隠したんでしょうねって言うと、あんたもすぐに縛られて行っちゃうでしょ。そうしたら処刑されちゃうわよね」
「ふぅぅん」
「ふぅぅんじゃないわよ。こうしてください。私は遠くへ身を隠すから旅費をください。三十両よ」
「それはまあ、良く教えてくれたな。悪いことはできないものだよ」
「できないなら殺さなくてもいいじゃない。仮に殺したとしても、墓場にでも埋めれば分からなくなるでしょ」
「庄吉にもお前にも隠して、お前たちがいないときに埋めようと思ってちょっとの間縁の下に入れたんだけど、ずっと人が来て、お前や庄吉がいつもそばにいるから、見つかったらまずいと思って、仕方なく床下にそのまま入れっぱなしにしたのが私の過ちなんだ」
「過ちでもいいから、旅費をよこしてくださいよ」
「でも今はここに金がないんだ。あの金を隠してあるところから持ってくるけど、死人が出たから警備員がついてないかな?」
「警備員じゃないわよ。部下たちも怖い怖いって思って、庄吉を縛って皆ついて行っちゃったの。誰もいませんって」
「お梅、何をガタガタ震えてんのよ? そんなにメソメソ泣いても仕方無いじゃないの。ほら、七兵ヱさんの羽織りを貸しな。あと、帯でも三尺でもいいから貸しな。ちょっと行って金を取ってくるから待ってて。その間に山越えしないといけないから、草鞋に紐をつけて、竹皮包でもいいから握り飯作って、松魚節も入れとけよ。食べ物の準備と梅干し詰めといて。俺、ちょっと行ってすぐ戻ってくるから」
原文 (会話文抽出)
「何じゃ、どうした」
「お梅はん、後をぴったり締めてお呉んなさい、足が泥になってるから此の雑巾で拭きますからな」
「何う為よったじゃア、深更になってまア其の跣足で、そないな姿で此処へ来ると云う事が有るかな、困った者じゃア、此処へ来い、何うした」
「和尚さん最前なア、私ア瞽女町で芸者買って金が足りないから貴方に十両貸してお呉んなさいましと、まアお願い申しましたが、あの金と云うものは実はその芸者や女郎を買ったのではないので、実はその庄吉の部屋でな賭博が始まって居ります所へ浮かり手を出して負けた穴塞ぎの金でございます」
「此奴悪い奴じゃアぞ、己れ出家の身の上で賭博を為るとは怪しからん、えゝ何じゃア其様な穴塞ぎの金を私にを借るとは何ういう心得じゃア」
「それは重々悪いがな、あれから帰って庄吉の部屋で賭博して居りますと、其処へ二番町の町会所から手が這入ったので」
「それ見ろ、えらい事になった、寺へ手の這入るというは此の上もない恥な事じゃアないか、どゞゞ何うした」
「私も慌てゝな庭の物置の中へ隠れまして、薪の間に身を潜めて居りますると、庄吉め本堂の縁の下へ逃げて這込んで見ると、先に一人隠れて居る奴が、ちま/\と其処に身を潜めて寝って居ります所へ、庄吉が其奴の帯へ一心に噛り付いて居る所へ、どか/\と御用聞が這入って来て、庄吉の帯を取ってずる/\と引出すと、庄吉が手を放せば宜いに、手を放さぬで居たから、先に這入った奴と一緒に引ずり出されて来る、庄吉は直に縛られてしまい、又是は何者か顔を揚げいと髻を取って引起すと若し……此処な家の夫の七兵衞さんの死骸が出たのじゃが」
「えゝ何……死骸それは……どゞどうして出た」
「何うして出たもないもんじゃ、あんたは此所なお梅はんと深い中になって、七兵衞さんが在っては邪魔になるからと云うので、あんた七兵衞さんを殺して縁の下へ隠したじゃろう、隠さいでも宜いじゃアないか、えゝ左様じゃないか、直ぐに庄吉は縛られて二番町の町会所へ送られ、私は物置の中に隠れて居て見付からなかったから、漸う這出して、皆出た後でそうっと抜出して此処まで来たのでげすがな、私がぐずぐずしてると直に捕まります、捕まって打叩きされて見れば、庄吉は知らぬでも私は貴方が楽しんで居る事は知って居るから、義理は済まぬと思いながらも打たれては痛いから、実は師匠の永禪和尚はお梅はんと悪い事をして居ります、それ故七兵衞さんを殺して縁の下へ隠したのでございましょうと私が云うたら、あんたも直に縛られて行って、お処刑を受けんではなるまいが、そうじゃないか」
「ふうーん」
「ふうーんじゃない、斯うしてお呉んなさい、私は遠い処へ身を隠しますから旅銀をお呉んなさい、三十両お呉んなさい」
「そりゃまア宜く知らしてくれた、眞達悪い事は出来ぬものじゃな」
「出来ぬたって殺さいでも宜いじゃないか、仮令殺しても墓場へでも埋れば知れやアせんのじゃ」
「庄吉にも汝にも隠し、汝たちの居ぬ折に埋めようと思って少しの間凌ぎに縁の下へ入れると、絶えず人が来るし、汝や庄吉が絶えず側に居るから、見られては成らぬと思って、拠ろなく床下へ入れた儘にして置いたが私の過りじゃな」
「過りでも宜いが、路銀をお呉んなさいよ」
「路銀だって今此処に無いからな、その路銀を隠して有る所から持って来るが、死人が出たので其処へ張番でも付きやアしないか」
「張番所でない、手先の者も怖い怖いと思って、庄吉を縛って皆附いて行ってしもうて、誰も居ませんわ」
「お梅、何をぶる/\慄える事はない、其様にめそ/\泣いたって仕様が無い、是れ七兵衞さんの褞袍を貸しな、左様して何か帯でも三尺でも宜いから貸しな、己はちょっと往って金を持って来るから、少し待ってろ、其の間にどうせ山越しで逃げなければ成らぬから、草鞋に紐を付けて、竹皮包でも宜いから握飯を拵えて、松魚節も入るからな、食物の支度して梅干なども詰めて置け、己は一寸往って来るから」
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