三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「もしお梅はん/\」…
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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』
現代語化
「もしお梅ちゃん//」
「誰だよ」
「ちょっと開けてよ」
「誰だよ」
「マサだよ。旦那に会いたいんだけれど、ちょっと」
「いないってば」
「旦那さんって、もうこちらには来てないんですか?」
「そんなこと言ってもダメよ。ほら、そこにいるじゃない」
「あ、覗いてんじゃん」
「あら、覗いたりして失礼だよ」
「障子閉めておけばいいのに」
「じゃ、こっちにお入りよ」
「いや、今近江屋に行っててね、本堂の修繕の相談に行ってたんだけど、帰り際にちょっと寄ったら、つまらないものだけど一杯ご馳走になってて、今帰るよ」
「帰らなくてもいいよ。檀家の者が来たら、師匠さんがうまいこと言って、畳替えもできたし、飛び石がこうなったとか何とか言えば、寄付してくれるよ。でもこちらの骨も折れるし、檀家の機嫌を取るのは大変なのよ。だからたまには息抜きしないとだめなんだ。息抜きしないと毒だよ。泊まってもいいよ。マサが檀家のことはうまいこと言うから、泊まってもいいよにしておくよ」
「いや、すぐ帰ります」
「もしお梅ちゃん、大事に息抜きさせてあげてね……あ、俺さ、悪いんだけどさ、金10両貸してくれない?袈裟文庫を抵当に置くからさ」
「この人、この間3両貸してくれって言ったけど返してないのに。袈裟文庫って、出家の身分で10両なんて、どこから金が入るのよ」
「この前瞽女町に行って芸者を買ったんだけど、面白くて抱いて寝るんじゃないんだけど遊んでたら、借金ができたんだ。それで袈裟文庫を預けようと思ったんだけど、明日法事があって困るから、これをお前さんに預けておいて、明日の法事の布施で差し引いて」
「黙ってよ。2、300円の布施で済むわけないじゃない。貸さないよ。やっぱり悪いところにばっかり行ってるじゃない。瞽女町で芸者を買うなんて破廉恥千万なヤツね」
「そんなこと言わないでよ。人間は楽しみがないとだめなんだって。葬式があれば通夜に行って眠い目でそのままお迎えに行かなくちゃいけないし、本堂に座ってお経を読むのは大変なんだよ。たまには芸者の顔も見たいよ。人間なんだから、出家だって人間なんだよ。釈迦も私も同じさ。悪いんだけどさ、あなただっていろいろこっちに来てお梅ちゃんとねえ、何にもないわけじゃないでしょ?お梅ちゃんと一杯やるのは楽しいでしょ?お互いに息抜きしないと、こんな辛い仕事はできないよ。お梅ちゃんのところに泊まっても庄吉にも言わないから、俺が責任を持つよ」
「うーん、いろいろ言うねえ……貸すけど、ちゃんと返せよ。それ持ってって」
「ありがたい。でも……お梅ちゃん、あまり大切にしないでね。旦那が病気になっちゃったら困るから。あれはちょっとうるさいんだよな」
「伝次さん、貸したよ」
「え」
「貸したよ」
「どうしたんだ、貸したのか?」
「すごいぜ、10両も貸した」
「なんだと、10両か。たったそれっぽっちか」
「いや、初めてだから10両。また少しずつ借りるんだろうな」
原文 (会話文抽出)
「もしお梅はん/\」
「誰だえ」
「ちょっと開けてくださませ」
「誰だえ」
「眞達で、旦那に逢いたいので、一寸なア」
「居ないてえ云え」
「あの旦那は此方においでなさいませんが」
「その様なことを云うてもいかぬ、そこに並んで居るじゃ」
「あゝ覗いて居やアがる」
「おや覗いたり何かして人が悪いよ」
「障子閉てゝ置けば宜いに」
「さア此方へお這入んなさい」
「いや今近江屋へ往ってのう、本堂の修繕かた/″\相談に往って、帰り掛に一寸寄ったら、詰らぬ物だが一杯と云うて馳走になって居るじゃ、今帰るよ」
「帰らぬでも宜えので、檀家の者が来ればお師匠さんが程の宜え事云うて畳替えも出来、飛石が斯うなったとか何とか云えば檀家の者が寄進に付く、じゃけれど此方も骨が折れる、檀家の機嫌気づまとるは容易なものじゃアないじゃて、だから折々は気晴しも無ければ成らん、気を晴さんでは毒じゃ、泊っても宜えがじゃ、眞達が檀家の者は宜え様にするから泊っても宜えがにして置くじゃ」
「いや直に帰ります」
「もしお梅はん、大事に気晴しのなるようにして呉れんなさませ…あゝ私なア済まぬが金十両借りたいが、袈裟文庫を抵当に置くから十両貸してくんなさませ」
「此奴此間三両貸せてえから貸したが返さぬで、袈裟文庫、何じゃえ、出家の身の上で十両などと、汝が身に何で金が入る」
「此間瞽女町へ往て芸者を買うたが、面白くって抱いて寝るのではないが遊んだので、借金が有るから袈裟文庫を預けようと思うたが、明日法事が有っても困りますから、是を貴方へ預けて置いて、明日法事が有れば勤めてお布施で差引く」
「黙れ、何だ二三百のお布施で埓が明くかえ、貸されぬ、うーん悪い処へ往き居って、瞽女町で芸者買うなんて不埓千万な奴じゃア」
「然う云いやすなね、人は楽みが無ければ成らぬ、葬式が有れば通夜に往て眠い眼で直に迎い僧を勤め、又本堂へ坐って経を読むは随分辛いが、偶には芸者の顔も見たい、人間に生れて何も出家じゃアって人間じゃア、釈迦も私も同じ事じゃ、済まぬが一寸、貴方だって種々此方へ来てお梅はんとねえ、何事もないじゃアねえ、お梅はんと気晴しに一杯やれば甘いから、お互に一寸は楽しみをして気を晴らさんでは辛い勤めは出来ん、お梅はんの処へ泊っても庄吉にも云わぬじゃ、私が心一つで」
「うーん種々な事を云うな……貸すが跡で返せ、それ持って往け」
「有難い、これども……お梅はん余り大切に仕過ぎて、旦那の身体悪うしては成らぬから、こりゃはやおやかましゅう」
「傳次さん貸したぜ」
「え」
「貸した」
「何うだい貸したろう」
「えらいもんじゃア十両貸した」
「なんだ十両か、たったそればかり」
「いや初めてだから十両、又追々と云うて貸りるのじゃ」
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