三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「はア御免なせえ」…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』

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「はい、すいません。お待ちください」
「はい、いらっしゃい。久しぶりですね」
「本当にご無沙汰しました。みんな変わりはないですか?」
「はい、みんな元気ですよ…あの子、田舎のおばあさんが来たよ」
「おばあさん、いらっしゃい」
「どうしたの?いつも会いに来たいと思っても忙しくて来られなくて。お前の顔が見たくて来たんだけど、おかあさんは元気?どうしてお店に来ないの?疱瘡にかかったの?そんな話を聞いたんだけど。それで、柿を持って来たよ。はい、食べなさい」
「柿、ありがとう。田舎のおばあさんが柿を持って来てくれると喜んでいましたよ。でもお父さんが、まだ青いからもう少し待って。お月見の頃には赤くなるからって」
「なんだか分からないけど、お母さんが変わってしまって、どうせ治らないから。お前が憎まれ口でも叩いて、どうせこのお家もダメになるだろうって言ってるから、文吉も心配してるんだけど、どうにもならないよ。お前も早く継母と離れて暮らせるといいんだけど、どうせ運が悪いと思って諦めてることよ」
「はい、はい。そう言ってます。ねえ、習い事に行くのも6つの6月から行けばいいって言うけど、早すぎるからって7つの7月から行くようになったから。前は、お弁当も届けてくれたんだけど、今度のお母さんが来てからはそうしてもらえないの。お父さんがどこへ行ってもお土産に絵や玩具を買ってきてたけど、今は買ってこないで、お母さんの物ばかり、簪とか櫛とかを買ってきて、私には何も買ってきてくれないよ」
「お前みたいな可愛い子がいるのに、子供のことを構わずに後妻をもらって。おすみの三回忌も経たないうちに女房をもったんだから。お前より女郎の方が可愛いんだろう……いじめたりするの?」
「すごくいじめるよ。縁側から突き飛ばしたり…こんなに傷があるよ。ねえ、裁縫ができないのにできるふりをして、お父さんが帰ると広げてできるふりをしてるの。お父さんが出て行くと、突然片付けて。豌豆が大好きで、湯呑に入れて店の若衆に隠して食べてるから、お母さんおくれって言うと、あげないって言うの。広がってやってるから、縫物を踏んだら突き飛ばしてここをぶつけて、あごに傷ができたの」
「ひどいね。大きな傷があるのに気がつかなくていたなんて。それで黙ってたの?お父さんに言わないの?」
「言った、言ったんだけど、お母さんがうまく言うから。お前さんの着物を縫っていると踏んだから怒ったのに、わざと踏んだから縫物を引っ張って滑って転んじゃったってそう言って嘘をつくの。前のお母さんが生きているとよかったんだけど。おばあさんのところへ逃げたいな。連れてってくれない?」
「ああ、連れて行かないなんてひどいことを言うもんじゃない。かわいそうに、お前のために柿を持って来たんだ」
「ねえ、麦焦がしができても、自分で砂糖と塩を入れて混ぜて、隠して食べて私にくれないの。柿も、みんな仲のいい人にあげて、私には1つしかくれないの。渋くて食べられないのをくれたの」
「それはお父さんに言えばいいよ」
「言ってもダメ。いろんな嘘をついて告げ口するから、お父さんは本当と思って。あの、お母さんは義理があるから大事にしなきゃいけない。優しくすれば増長する。これからじゃだめだって言って、一緒になってお父さんが拳骨で殴るから痛いよ」
「あれ、一緒になって?ひどいなあ。じゃあ、七兵衛殿に会ったら、お前だけはおばあさんが連れて行く。田舎だから食べ物が少ないけど不自由はさせないようにするよ。14、5歳になればいいところに奉公に出して、藤屋の別家に出させるか、そうじゃなければ、こっちの別家に出させるから、一緒に来るか?」
「行きたいよ。だって田舎で食べ物がなくても、お母さんに虐められるよりはいいから」
「どなたかいらっしゃいました…あら、いらっしゃい。栄二郎、お茶を持ってきておばあさんにあげなさい。田舎の人だから、お餅やおかしの方がいいわ…よくいらっしゃったわね。いつもお話をしているばかりで、こちらから一度お伺いしなければいけなかったのですが、なにしろ忙しくってお店を空けられなくて、ご無沙汰ばかり。まあ、こちらへ」
「はい、すいません。お久しぶりです。お店はいつもお繁盛だと聞いていますが。文吉も行っちゃいけないって言うんだけど。秋口は忙しいって、お伺いできなくてすみません。あなたがたもお元気そうで」
「本当によくいらっしゃいました。帝釈様にお参りに行こうと思って、帰りにお寄りしようって、お梅と話してたんですけれど…お梅」
「あら、ようこそ。田舎の人は重いものを背負っていらっしゃるのね」
「はい、お久しぶりです。はい、ウチの屋敷で実った柿なんです。重いんだけど、どうにか渋が抜けたら孫に食べさせようって、孫に食べさせればいいからって、重くても厭わずに持ってきましたよ…もう遠慮なく、ごはんも食べてきましたから。途中で足が疲れたから、そばでも食べようと思って、両国まで来てそばを食べたから、お腹がいっぱいです。気にしないでくださいね…七兵衛さん、ちょっと相談なんですけど、惣領の正太郎を私のところに引き取りますから」
「どうして?どういうわけ?」
「どういうわけと言っても。私のところに来たいそうだけど、私のところに置きたくはないけど、あなた様は留守がちで、家のことはご存じないでしょうが、悪戯はするかどうか知らないけど、我儘な10歳にもならない正太郎だから、ちょっとくらいのことなら勘弁してやってくださいよ」
「あら、おばあさん。極論を言ってるじゃないの。来ると愚痴を言うけれど、私の子供でしょ。奉公人も連れてるわよ…正太。また田舎のおばあさんに何か言いつけたの?」
「何も言いつけてませんよ。おばあさんが向こうに連れて行ってくれるから行きたいんです」
「行きたいって?」
「どういうわけで大した親父を放り出して、私の田舎に来て?不自由しても子供心に思うのはよくわかりますが、それでもくれたら、縁を切ってくれたら」
「そんなばかなことを言ってはいけません」
「どうしてそんな乱暴に育てるんですか?」
「乱暴には育てませんよ」
「ご主人……正太郎が言いつけたから、おばあさんはそう思ってるんでしょう。私も我儘だから、あいつもわがままを言うけど、邪険には育てられません。仏様の前もありますし、私も新入りですから、邪険に育てるなんてことはありませんよ」
「邪険にしないって、このあごの傷は何?どうして縁側から突き落としたの?女郎だから子を持ったことがないから、子供の可愛さは知らないでしょうが、あなたに子供ができてごらんなさい。叩いたりなんてできないですよ。かわいそうで。子供心にこっちに行きたいって言うんです。私は正太をここには置けませんよ」
「おばあさん、どこまでも正太を連れて行くとおっしゃるけど、家を継がせようって言うから、どうあってもやらないって言ったらどうする?」
「やらないって言えば、命をかけてでも連れて行きますよ。殴ったり投げたりして傷をつけるような家に、置いたりはしませんよ。どこにだって出ますし、お代官様に出ても連れて行きますよ」
「そんなことを言って…正太、お前、おばあさんのところに行きたいのか?」
「行きたいよ」
「ほら、ごらんさい。よく言ったわ。どうあっても縁切で」
「じゃああげましょう。その代わり、何ですか?あなた様のところとは絶交です」
「絶交でも何でも連れて帰ります」
「行来しませんよ」
「あたりまえよ。ウチに誰が来ますか?あなた様のような奥さんが、一周忌も経たないうちに女郎を買って子供に泣かせるような人では、どんなことがあっても、あなた様のところには行きませんよ。ろくなものも食べさせないでしょ」
「そんなことを言うのは、正太が言いつけるからですよ」
「何て言ったって、これは皆知ってますよ。さあ、正太。来い」

原文 (会話文抽出)

「はア御免なせえ」
「へいお出でなさい、久しくお出でなさいませんね」
「誠に無沙汰アしました、皆は変りねえか」
「へい皆変る事もござりません…あの坊ちゃん田舎のお婆さんがお出でなすったよ」
「お婆さんおいで」
「何うした、毎度来てえ/\と思っても忙しくて来られねえで、汝が顔を見てえと思って来たが、なにかお繼は達者か、なにか店へも出ねえが疱瘡したか、然うだってえ話い聞いた、それ汝がに柿を持って来た、はア喰え」
「柿、有難う、田舎のお婆さんが柿を持って来てくれると宜いって然ういって居たが、お父さんが、あのまだ青いから最う少したって、お月見時分には赤くなるからってそう云ったよ」
「何だか知らねえがお母が異って何うせ旨くは治るめえ、汝が憎まれ口でも叩いて、何うせな家もうなやにゃア往くめえと文吉も心配して居るが、何うも仕方がねえ、早く女親に別れる汝だから、何うせ運は好くねえと思って居るが、何でも逆らわずにはい/\と云って居ろよ」
「はい/\て云って居るの、あのねえお手習に往くのも六つの六月から往くと宜いて云ったけれども早いからてね、七つの七月から往く様になったから、先にはお弁当なんぞも届けて呉れるのだが、今度のお母さんが来てからは然う往かないの、お父さんが何処かへ行ってもお土産に絵だの玩具だの買って来たが、此の頃は買って来ないでお母さんの物計り簪だの櫛だのを買って来て、坊には何にも買って来てくれないよ」
「汝のような可愛い子があっても子に構わず後妻を持ちてえて、おすみの三回忌も経たねえうち、女房を持ったあから、汝よりは女郎の方が可愛いわ……虐めるか」
「怖ろしく虐めるの、縁側から突飛したり…こんなに疵が有るよ、あのね裁縫が出来ないに出来る振をして、お父さんが帰ると広げて出来る振をして居るの、お父さんが出て行くと、突然片付けて豌豆が好きで、湯呑へ入れて店の若衆に隠して食べて居るから、お母さんお呉れって云ったら、遣らないと云ってね、広がって居るから縫物を踏んだら突飛して此処を打って、顋へ疵が出来たの」
「呆れた、大い疵があるに気が注かねえで居た、それで汝黙って居たか、父に云わねえか」
「云った、云ったけれどもお母さんが旨く云って、おのお前の着物を縫っていると踏んだから、いけないと云ったら、態と踏んだから縫物を引張ったら滑って転んだって然ういって嘘をつくの、先のお母さんが生きていると宜いんだけれども、お婆さんの処へ逃げて行こうと思った、連れてって呉れねえか」
「おゝ連れて行かねえで、見殺しにする様なもんだから、可愛そうに、汝に食わせべえと思って柿を持って来たゞ」
「あのね麦焦が来ても、自分で砂糖を入れて塩を入れて掻廻してね、隠して食べて、私には食べさせないの、柿もね、皆な心安い人に遣って坊には一つしか呉れないの、渋くッていけないのを呉れたの」
「それは父に汝いうが宜い」
「云ったっていけない、いろんな嘘をついて云つけるからお父さんは本当と思って、あのお母さんは義理が有るのだから大事にしなければならない、優しくすれば増長する、今からそれじゃアいけねえってねえ、一緒になってお父さんが拳骨で打って痛いやア」
「あれえ一緒になって、呆れたなア本当にまア、好え、七兵衞どんに己逢って、汝だけはお婆さんが連れて行く、田舎だアから食物アねえが不自由はさせねえ、十四五になれば立派な処へ奉公に遣って、藤屋の別家を出させるか、然うでなければ己が方の別家えさせるから一緒に行くか」
「行きたいやア、だから田舎で食物が無くってもお母さんに抓られるより宜いから行くよ」
「何方かお出でなすった……おやお出でなさい、榮二郎お茶を持って来てお婆さんに上げな、田舎の人だから餅菓子の方が宜いから……宜くお出でなすったね、お噂ばかり致して居りまして、此方から一寸上らなければ成らんですが、何分忙がしいので店を空けられないで、御無沙汰ばかり、まア此方へ」
「はい御免なせえ、御無沙汰アして何時も御繁昌と聞きましたが、文吉も上らんではならねえてえ云いますが、秋口は用が多いで参り損なって済まねえてえ噂ばかりで、お前さんも達者で」
「まことに宜くお出でなすった、帝釈様へお詣りに行こうと思って、帰りがけにお寄り申そうとお梅とも話をして居たが……お梅」
「おや宜く入っしゃいました、宜く田舎の人は重い物を脊負ってねえ」
「はい御無沙汰、はい己が屋敷内に実りました柿で、重くもあるが何うかまア渋が抜けたら孫に呉れべえと、孫に食わしてえばっかりで、重えも厭わず引提げて来ましたよ……はア最う構わず、飯も食って来ましたから、途中で足い労れるから蕎麦ア食うべえと思って、両国まで来て蕎麦ア食ったから腹がくちい、構って下さるな…七兵衞さん、私参って相談致しますが、惣領の正太郎は私が方へ引取るから」
「何で、何ういう訳で」
「何ういう訳もねえ、おらが方へ来てえだ云うが、おらが方へ置きたくはねえが、お前様ア留守勝で家の事は御存じござんねえが、悪戯は果すかは知らねえが、頑是がねえ十にもなんねえ正太郎だから、少しぐれえの事は勘弁して下さえ」
「あれさお婆さん極りを云って居るぜ、来ると愚痴を云うが、私の子だもの、奉公人も付いて居るわね……正太は又田舎のお婆さんに何か云ッつけたな」
「何も云ッつけやアしない、お婆さんが彼方へ連れて行くてえから行きてえや」
「行きたいと」
「何ういう訳で大事の親父をまず捨てゝ、己が方の田舎へ来てえ、不自由してもと児心にも思うは能く/\だんべえと思うからお呉んなさえ、縁切でお呉んなさえ」
「そんな馬鹿な事を云ってはいけません」
「何故そんならぞんぜえに育てるよ」
「ぞんざいに育てはしませんよ」
「旦那……正太郎が云ッつけたのでお婆さんは然うと思って居るのでしょう、私だっても頑是がないから、それは彼れも我儘を致しますが、邪慳に育てることは出来ません、仏様の前も有りますから、私も来たての身の上で私が邪慳に育てるようなことは有りませんよ」
「邪慳にしないてえ、これが顋の疵は何うした、なぜ縁側から突落した、お女郎だアから子を持ったことが無えから、子の可愛い事は知りますめえが、あんたに子が出来て御覧なさえ、一つでも打くことは出来ねえよ、辛いから児心にも己ア方へ行きてえと云うのだ、おらは正太を此処へは置かれましねえよ」
「お婆さん何処までも正太は連れて行くと云うが、家督させようと云うので何う有っても遣らぬてえば何うする」
「遣らぬと云えば命に掛けても連れて往きやすべえ、打ったり擲えたりして疵を付けるような内へは置かれやしねえじゃアござんねえか、何処へ出てもお代官様へ出ても連れて行くだア、はア」
「そんな事を云って……正太手前お婆さんの方へ行きたいか」
「行きたいや」
「それ見なさえよ、善く云った、何うあっても縁切で」
「そんなら上げましょう、其の代り何ですぜ、お前さんの処とは絶交ですぜ」
「絶交でも何でも連帰りやすべえ」
「行通いしませんよ」
「当りまえ、おらア方で誰が来べえ、お前さんのような女房が死んで一周忌も経たねえ中、女郎を買って子供に泣きを掛けるような人では、何んな事が有ってもお前さんの側へは参りませんよ、碌な物も喰わせねえではア」
「あゝ云うことを云って、正太が云ッつけるからですよ」
「何云ったって是が皆な知って居らア、何だ、さア正太来い」

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