三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「何卒御勘弁なすって下さい、お願いでござい…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』

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「どうかご勘弁を、お願いいたします」
「まあ、静かにしなさい。騒いではいけません。世間で何事かと思われるでしょう。え、何も騒ぐことはありません……おい、照。お前、どうしてそんなに驚くんだ?私が来たから畳に頭をこすりつけて、頭を上げられないのか。何を考えて、そんなに恐れているんだ?さっぱりわかりません……山平殿、ではとてもご挨拶もできませんから、頭を上げてください。きん、静かにして下の締めをしっかりしておきなさい。そうしないと、賊でも入ってきたら大変だ」
「はい。本当に申しわけございません。お嬢様は何も私が昔から奉公していて、行くあてもないから、きんよ、家を貸してくれっておっしゃったわけじゃありません。世間知らずでいらっしゃるから、人の目に触れてはなりませんと私がお招きしたのが最初で、どうかご勘弁を」
「おい、静かにしなさいよ。何だかよくわからないんですが、それじゃ、何かこそこそしているところへ私が上がってきたから、山平殿と不倫をしていると勘違いして、私が怒ってここに上がってきたと思っているのか。こそこそしていた以上は言い訳はできない。さあ、済まないことをしたとそれでそんなに驚いたのか。そうなのか。そうだろう。そうでなければそんなに驚くわけがない。本当にきん、迷惑をかけてしまったな。ね、山平殿。身分は低いですが、立派なあなた様が、そんなに普段から心掛けがよくて、行いもよく、穏やかで優しい人で、他人の女房と不倫をするような非道なことをする人ではありませんよね……それがこそこそしていたのが間違いだったんです。男女は7歳になると席を一緒にすることができませんから、言い訳ができないと思います。山平殿も恐縮してる様子だし、照も済まない、どう言訳しても信用してもらえないのは当然だ、不倫と言われても仕方ない、身に覚えはないけれど、ここに二人でいたのが間違いだ、残念に思うからそうやって泣き伏しているのか。何ともまあ、気の毒だ。ひどいところへ上がってきてしまったな。そんなわけじゃないんだよね、きん」
「はい、はい。そんなわけではありませんから」
「でしょう?私が養子に来る前から、照の心掛けは本当に感心しています。何も言わなくても、自然とわかりますよ。ほら、去年の11月3日に兄さんが何者かに殺されて、とても残念だったんです。ご両親は年老いていますし、武士の家に生まれて、女でも仇を討たないのはいけないと思って覚悟はしても、相手は立派な武士で、女の非力では討てません。誰に助太刀を頼もう、親切な人はいないかと考えていたら、よく出入している山平殿が、特に心が正しくて誠実な人に見えたので、兄の仇討に出立したいと助太刀を頼んだのでしょう。でも山平殿は、それはできません、あなたの養父になる前の大切な娘さんを、若い男の私が女を連れて行くわけにはいきません。ご両親の頼みがないとできないと何度も言われて、結局助太刀してくださいと照がもう一度頼んだのは、本当に立派なことですよね。頼まれてもまさか女を連れて行くわけにもいかず、こちらはただひたすら頼むばかり。でも山平殿も困ったでしょう。私が改めて頼むわけではありませんが、山平殿。中根善之進殿を討ったのは水司又市だと思います。あいつはあの時蒸発して行方が知れず、中傷ばかり書いた扇子が善之進殿の遺体のそばに落ちていました。その扇子は部屋で又市が持っていたことを私は知っています。だから、敵は私の考えでは又市に間違いありません。故郷に帰って悪い考えを巡らしている悪い奴です。それに腕が立つから何をしでかすかわかりません。だから、改めて頼むんですが、どうか内緒で故郷に行って、又市を捕まえてくれませんか……照は、どこまでも又市を探して討たなければならないんですが、私が山平殿と一緒に来てくれとは言えません。養子になってまだ間もないので、頼むのは表向きは無理です。だから、お父様とお母様への言い訳に、私も武士の家に生まれて女でも敵討ちをしたいので、池の端の弁天様に、兄の仇を討たないうちは絶対に結婚しませんと命をかけて誓ったのに、無理に養子にするからお嫁にいったんです。重二郎とはまだ同衾していませんのは、それまで私が決意したことを果たさなければ、心が晴れなくて。神に誓ったこともありますし、仇討ちに出立する不孝はどんな形でお詫びをしても足りないと思います。無断で家出するのは大変失礼ですがお許しくださいという手紙を書きなさい。文章は私が教えるから、私の言うとおりに書きなさい。それから山平殿は……あなたに一緒に来てくれとは言いませんが、山平殿は故郷に行ってあいつを調べたり助太刀したりして、お照が仇討ちをして帰る時に、あなたも都合よくその場に居合わせて、幸運にも助太刀して本意を遂げさせたらいいと思います。あなたのご家族には、どうか潰されないようにしますから。重二郎の刀にかけてもそうしますから、二人に改めて頼むわけではありませんが、仇を討たせて望みを叶えてやってください。お前は奉公したことがないからご両親にわがままを言っているけど、山平殿は親切だけど長旅なんだ。わがままを言って山平殿に見捨てられないように仲良くしなさい。なに、もし捨てられたら仇は討てないでしょう?これから先だって長い旅なんだから、水も違うし気候も違うんだから、まずいものを食べてお腹を壊さないようにしなさい。そうじゃないか?とにかく大切に帰ってきてくれなきゃ困るよ。たとえそう言っても、二人でいたから不倫をしたと思うだろう。不倫もしないのにそう思われるのは残念だからって、刃物で自分を傷つけるなんてことになったら、お父様とお母様にはもっと申し訳が立たないぞ。必ず旅の途中で悪いものを食べて、お腹を壊さないようにしてね、お照」

原文 (会話文抽出)

「何卒御勘弁なすって下さい、お願いでございます」
「まア/\静かに致せ、そう騒いではいかん、世間で何事かと思われる、えゝ何も騒ぐ事はない……これさお照お前何故そんなに驚きなさる、私が来たので畳へ頭を摺付け、頭を挙げ得ぬが、何と心得て左様に恐れて居るのか、何うも何ともとんと私には分りません……山平殿それでは誠に御挨拶も出来ぬから頭を挙げて下さい…きん、静かに致して下の締りを宜くして置くが宜いぞ、よう、賊でも這入るといかぬ」
「はい誠に何うも何ともお詫の致方もございません、お嬢様が何も私が旧来奉公を致し、他に行く処もないからきんや家を貸せと仰しゃった訳でもございません、世間見ずで入っしゃいますから人の目褄に掛ってはなりませんと私がお招び申したのが初めで、何卒/\御勘弁なすって」
「これさ静かにしろよう、何だか分りませんが、それじゃア何か差向で居る処へ私が上って来たから、山平殿と不義濫行でもして居ると心得て、私が立腹して此れへ上って来た故、差向で居た上からは申訳は迚も立たぬ、さア済まぬ事をしたと云うので左様に驚きましたか、左様か、然うだろう、然うでなければ然う驚く訳はない、誠にきん貴様は迷惑だ…のう山平殿、役こそ卑いが威儀正しき其の許が、中々常の心掛けと申し、品行も宜しく、柔和温順な人で、他人の女房と不義などをうん…なア…為る様な非義非道の事を致す人でないなア……が差向で居ったが過りであった、男女七歳にして席を同じゅうせずで、申訳が立たぬと心得て、山平殿も恐れ入って居らるゝ様子、照も亦済まぬ、何う言訳しても身のあかりは立つまい、不義と云われても仕方がない、身に覚えはないけれども是れに二人で居たのが過り、残念な事と心得て其の様に泣入って居ることか、何とも誠に気の毒な、飛んだ処へ私が上って来たのう、そう云う訳は決してないのう、きん」
「はい/\決して夫れはそう云う、あの、其様などうも訳ではございませんから」
「だからノウ、私が養子に来ぬ前から照の心掛は実に感心、云わず語らず自然と知れますな、と申すは昨年霜月三日にお兄様は何者とも知れず殺害され、如何にも残念と心得、御両親は老体なり、武士の家に生れ、女ながらも仇を討たぬと云う事はないと心掛けても、何うも相手は立派な士であり、女の細腕では討つ事ならず、誰を助太刀に頼もう、親切な人はないかと思う処へ、親しく出入を致す山平殿、殊に心底も正しく信実な人と見込んだから、兄の仇討に出立したいと助太刀を頼んだので有ろうが、山平殿は私には然うはいかん、御養子前の大切の娘御を私が若い身そらで女を連れて行く訳には往かん、両親の頼みがなければいかんなどと申されて、迚もお用いがないのを、止むを得ず助太刀をして下さいと照が再度貴公に頼んだは実に奇特な事で、頼まれてもまさか女を連れて行く訳にもいかず、此方は只管頼むと云う、是は何うも山平殿も実に困った訳だが、私が改めてお頼み申す訳ではないが、山平殿、中根善之進殿を討ったは水司又市と私は考える、彼の日逐電して行方知れず、落書だらけの扇子が善之進殿の死骸の側に落ちて有ったが、その扇子は部屋で又市が持っていた事を私は承知して居るから、敵は私の考えでは又市に相違なし、お国表へ立廻る彼アいう悪い心な奴、殊に腕前が宜しいから何んな事を仕出かすかも知れん、故に私が改めて貴公に頼むは、何うか隠密になってお国表へ参って、貴公が何うか又市を取押えて呉れんか……照お前は何処迄も又市を探ねて討たんければならぬが、私から山平殿に一緒に行って下さいとは、何うも養子に来て間もなし、頼む訳には表向いかんから、お前はお父様やお母様への申訳に、私も武士の家へ生れ女ながらも敵討を致したい故、池の端の弁天様へ、兄の仇を討たぬ中は決して良人を持ちませんと命に懸けての心願である処へ、強って養子をしろと仰しゃるから養子をしたが、重二郎とは未だ同衾を致しませんのは、是まで私が思い立った事を果さずば、何うも私が心に済みません、神に誓った事もあり、仇討に出立致す不孝の段はどの様にもお詫致す、無沙汰で家出致す重々不埓はお宥し下さいと、文面は私が教えるから私の云う通りに書きなさい、また山平殿は……貴公に倶に行って下さいとは云われないが、山平殿は国表へ参って彼を取調べ、助太刀をしてお照が仇討をして帰る時、貴公も共に其の所へ行合わし、幸い助太刀をして本意を遂げさせしと云ってお帰りになれば、貴公の家は何うか潰さぬ様に致そう、重二郎刀に掛けても致すから、二人へ改めて頼む訳にはいかんが、然うして仇を討たせて望を叶えてやって下さい…お前は奉公した事がないからお父様お母様に我儘を云うが、山平殿は親切なれども長旅の事、我儘な事を云って山平殿に見捨てられぬ様に中好う、なにさ若し捨てられては仇は討てず、亦これから先は長い旅、水も異り気候も違うから、詰らん物を食して腹を傷めぬ様にしなさい、左様じゃアないか、何でも身を大切にして帰って来てくれんければ困りますぞ、縦えあゝは仰しゃるが、二人で居たから密通と思召すに違いない、密通もせぬに然う思われては残念と刃物三昧でもすると、お父様お母様に猶更済みませんぞよ、必ずとも道中にて悪い物を食して、腹に中らぬ様にしなさるが宜いのう、お照」

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