三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「どうも先達は有難うございます、貴方、あん…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』

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「「どうも先日のお礼はありがとうございました。あそこまで心配していただくなんて、困っちゃいますよ。お忙しいところをお呼び立てしてしまって、申し訳ありませんでした」

「毎回お騒がせしてしまって、申し訳ございません。今日は急なお呼び出しだったので、何かあったのかと思って参りましたが、どうしたんですか?」

「どうしてって、困ったんですよ。どうしたらいいものかと悩んでいて。お照さんに両親様から急に養子をもらうように言われたそうなんですが、お嬢さんは嫌だと言って弁天様にお参りをしたとか。でもお父様が聞かないで、約束したんだから変えられないって言うから、仕方なく『養子をもらう気はない。約束したんだから、どんなことがあっても強情を張る』って言ったそうなんです。でも、お父様が『腹を切る』とか『死んでしまう』とか言うから、『それなら身を投げて死んでしまおう』なんて、子供みたいなことを言うんです。困っちゃって。何か言えば『自害する』とかバカみたいなことを言うから、お手上げなんです。それで、どうしたらいいかと思って、あなたにお呼びしたんです」

「ふむ、なるほど。それで、どこのどなたから養子をもらうんですか?」

「お嬢さんのお話では、白島様には言わない方がいいらしいんですが、あの武田重二郎様なんですよ。あの嫌味でつまらない人、私も勤めてるうちにちょっと見ましたが、ひねくれてて堅苦しくて嫌な人なんです。困ったんですが、断るわけにもいかないので、本当に心配してるみたいです」

「お照さん……この山平は江戸に来たばかりで、今までお世話になってきたのは、実は武田の重左衛門様のご恩なんですよ。そのご子息が養子になる約束になってるんですが、あなたが断ったらどうして裏切ったのかってことになるでしょう。そうなったら、私は屋敷を追放されることになります。私のことはどうでもいいんですが、あなたのお父様にも申し訳が立たない。どうか、今までの約束は水に流して、武田さんから養子をもらってください。実は今までは隠していたんですが、郷里に帰る時に男子を出産しまして、今年で2歳になります。郷里には妻と子供がいるんです」

「え?」

「あなたに妻がいて、子供まで2人も?まだお若いのに。ああ、そうなんですね……お嬢さん、白島様にご迷惑がかかるから嫌でしょうけど、思い切って、養子をもらいなよ。このことが知れたら、堅物のお父さんが激怒して、長年勤めてきたのに娘を二階で密会させてるとは不埒な女だと言って、私を切られるかもしれませんよ。ほら、あの人の性格ですから。ねえ、養子をもらいながら、時々密会すればいいんですよ。それでバレなければいいでしょう?釜浦様の奥方みたいに、そういうこともあるくらいだし。いいじゃないですか、そうすれば」

「本当に、私は夢のまた夢と諦めますから。お嬢様にはきっと薄情者だと思われるでしょうが、この白島山平をかわいそうだと思召すなら、あなたの両親様が仰る通りに武田さんから養子をもらってください。今、金の言った通り、お聞き届けがなければ仕方がありません。私も腹を切ることになるでしょう」

「あなたが腹を切ると言うし、お嬢様は自害すると言うし、困っちゃいますね……お嬢様、どうします?」

「はい。そんなに白島様が心配しておっしゃるのであれば、仕方がありません。それに、お国に妻と子供がいることは、私は何も知りません。身を切られるよりもつらいですが、あなたのお言葉ですから、武田さんから養子してもらいます」

「よくおっしゃいました。それでなんとかするんですから。また、時々密会する方法も考えますから」

原文 (会話文抽出)

「どうも先達は有難うございます、貴方、あんな心配をなすっては困りますよ、お忙がしい処をお呼立て申しましたのは困った事が出来ましてね」
「毎度厄介になりまして気の毒でのう、今日は急に人だから何事かと思って来たのだが、どう云うわけだえ」
「どう云うたって実に困りますよ、何うしたら宜かろうと存じまして、お照さまに御両親様から急に御養子を遊ばせと仰しゃるので、嬢様は否だと云って弁天様へ禁ったと仰しゃったそうでござりますが、お父様が聴かぬので、一旦約束したから変替は出来ぬと云うので、仕方がないから私は養子をする気はない、どんな事が有っても自分が約束したからは何処迄も強情を張る積りだが、お父様が腹を切るの何のと云うから、寧そ身を投げて死んでしまおうと、小さいお子様の様な事を仰しゃるので困りますよ、何か云えば直に自害をするのなどと詰らん事を云うので困ります、私は思案に余りますから貴方をお呼び申したので」
「ふう成程、そうして何方から御養子を」
「お嬢様の仰しゃるには、白島様には云わぬ方が宜いと仰しゃいますが、あの武田重二郎様ね、それあの厭な気の詰るお方で、私も御奉公して居るうち見ましたが、偏屈な嫌に堅苦しいね嫌な人で、実に困った訳でございますけれども、否と言切る訳にも往きませんから誠に心配していらっしゃいます」
「お照さん……この山平は江戸詰に成りまして間がない事で、これまでお引立を蒙りましたは、実は武田の重左衞門様の御恩でござります、そのお家の御二男様が御養子の約束になって居るものを、貴方が否と仰しゃれば何故に背くと、夫れより事が顕われますれば、拙者は屋敷を逐出される事になります、私の身は仕方がない事でございますが、あなた様の御尊父にも済まぬ事で、何卒是れまでお約束は致しましたが、何卒親御の意を背くは不孝なり、あなたも世間へ済まぬことになりますから、只今までの事は水にあそばして、何うかあなた武田から御養子をなすってください、実は只今まで私はお隠し申したが、国表を立出でます時男子出産して今年二歳になります、国には妻子がございますので」
「えゝ」
「あなた奥様があるの、おやお子さん方がお二人、まだ若いのに、おや然うでございますかねえ…お嬢さん白島様が御迷惑になりますから、お厭でもございましょうけれども、思い切って貴方、お厭でも御養子を遊ばせな、此の事が知れると物堅い旦那様だからきんもきんだ、長らく勤めて居ながら娘を二階で逢引をさせるとは不埓な女だと仰しゃって私が斬られるかも知れませんよ、ねえ彼ア云う御気象ですから、ねえ御養子をして置いて時々お逢い遊ばせよう、然うすりゃア知れやアしませんよ、あの釜浦様の御新造様みたいな、彼アいう事もありますから、宜いじゃアありませんか、然う遊ばせよ」
「誠に手前も夢の昔と諦めますから、申しお嬢様嘸不実な者と思召すでござりましょうが、この白島山平を可愛相と思召すなら、あなた親御様の仰しゃる通り武田から御養子をなすって下さい、只今も金の申す通り、お聴済みがなければ止むを得ず、手前どうも切腹でもしなければならん訳で」
「貴方ア切腹なさると仰しゃるし、お嬢様は自害などと困りますねえ……お嬢様何う遊ばしますよ」
「はい、それ程白島様が御心配遊ばす事なれば致方がありませんから、それにお国に奥様もお子様もある事は私は少しも知りません、最う身を切られるより辛うございますけれども、あなたのお言葉でございますから、背かず武田から養子致します」
「宜く仰しゃいました、それで何うでも成ります、またねえ時々お逢い遊ばす工夫もつきますから」

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