太宰治 『津軽』 「久し振りだなあ。はじめは、わからなかつた…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『津軽』

現代語化

「久しぶりだなあ。最初は、わからなかった。金木の津島と、うちの子供が言ったけど、まさかとは思った。まさか、来てくれるとは思わなかった。小屋から出てお前の顔を見ても、わからなかった。修治だ、って言われて、あれ、と思ったら、それから、口がきけなくなった。運動会も何も見えなくなった。30年近く、たけはお前に逢いたくて、逢えるかな、逢えないかな、とそればかり考えて暮らしてたのを、こんなに立派に大人になって、たけに会いたくて、はるばる小泊まで訪ねてきてくれたかと思うと、ありがたいのか、うれしいのか、悲しいのか、そんなことはどうでもいいや、まあ、よう来たなあ。お前の家に奉公に行った時には、お前は、よろよろ歩いてはころび、よろよろ歩いてはころび、まだちゃんと歩けなくて、ご飯の時には茶碗を持ってあちこち歩き回って、台所の石段の下でご飯を食べるのが一番好きで、たけに昔話を語らせて、たけの顔をよく見ながら1口ずつ食べさせて、手もかかったけど、可愛くてな。それがこんなに大人になって、みんな夢のようだよ。金木にも、たまに言ったけど、金木の街を歩きながら、もしやお前があの辺で遊んでないかと、お前と同じ年頃の男の子を1人1人見て歩いたもんだ。よう来たなあ。」
「子供は?」
「子供は、何人?」
「男? 女?」
「女だ。」
「いくつ?」

原文 (会話文抽出)

「久し振りだなあ。はじめは、わからなかつた。金木の津島と、うちの子供は言つたが、まさかと思つた。まさか、来てくれるとは思はなかつた。小屋から出てお前の顔を見ても、わからなかつた。修治だ、と言はれて、あれ、と思つたら、それから、口がきけなくなつた。運動会も何も見えなくなつた。三十年ちかく、たけはお前に逢ひたくて、逢へるかな、逢へないかな、とそればかり考へて暮してゐたのを、こんなにちやんと大人になつて、たけを見たくて、はるばると小泊までたづねて来てくれたかと思ふと、ありがたいのだか、うれしいのだか、かなしいのだか、そんな事は、どうでもいいぢや、まあ、よく来たなあ、お前の家に奉公に行つた時には、お前は、ぱたぱた歩いてはころび、ぱたぱた歩いてはころび、まだよく歩けなくて、ごはんの時には茶碗を持つてあちこち歩きまはつて、庫の石段の下でごはんを食べるのが一ばん好きで、たけに昔噺語らせて、たけの顔をとつくと見ながら一匙づつ養はせて、手かずもかかつたが、愛ごくてなう、それがこんなにおとなになつて、みな夢のやうだ。金木へも、たまに行つたが、金木のまちを歩きながら、もしやお前がその辺に遊んでゐないかと、お前と同じ年頃の男の子供をひとりひとり見て歩いたものだ。よく来たなあ。」
「子供は?」
「子供は、幾人」
「男? 女?」
「女だ。」
「いくつ?」

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