太宰治 『津軽』 「和服でおいでになると思つてゐました。」…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『津軽』

現代語化

「和服で来ると思っていました。」
「そんな時代じゃありません。」
「とにかく、私の家にちょっと寄って休んでいきませんか？」
「ありがとうございます。今日はお昼頃までに、蟹田のN君のところへ行こうと思ってるんです。」
「存じています。Nさんから聞きました。Nさんも、お待ちになってるようです。とにかく、蟹田行きのバスが出るまで、私の家で一休みしたらどうですか。」
「この度はご苦労さまでした。」
「ビールの方がいいですか？」
「いや、お酒のほうで。」
「女中たちを怒鳴り散らすところが、あれのいいような悪いようなところですね。」

原文 (会話文抽出)

「和服でおいでになると思つてゐました。」
「そんな時代ぢやありません。」
「とにかく、私の家へちよつとお寄りになつてお休みになつたら？」
「ありがたう。けふおひる頃までに、蟹田のＮ君のところへ行かうと思つてゐるんだけど。」
「存じて居ります。Ｎさんから聞きました。Ｎさんも、お待ちになつてゐるやうです。とにかく、蟹田行のバスが出るまで、私の家で一休みしたらいかがです。」
「このたびは御苦労さまでした。」
「ビールのはうが、いいんでしたかしら。」
「いや、お酒が。」
「女中たちを呶鳴り散らすところが、あれの悪いやうな善いやうなところだ。」

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