横光利一 『旅愁』 「中国はフランスと非常に似ているだろう。ね…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

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「中国はフランスと似てるんだ。パリなんて、あれは中国じゃないか。でも、僕は中国の方が、文明がちょっと上だと思うんだ。だってフランスってのは、見てわかる幾何学の国だ。はっきりしてて合理的だ。幾何学を数字にしたのが代数だから、さっきも言ったように代数の国とも言えるよ。でも、中国は違う。あれは変数みたいなものなんだよ」
「でも、中国が危なくなってきたのは、本当だろうな。フランスの共産党が勢いづいちゃって、世界のバランスが崩れたんだから。西安が突破口になって、蒋介石も頭に来てんだろう」
「でもさ、心配したってしょうがないよ」
「僕らにとって一番大切なのは、ソ連みたいに人に科学を教えることじゃなくて、中国みたいに想像力を与えることだ。人の心を知ることさ。どこの国も科学ばっかり発達して、お互いの心がわからなかったら、政治は悪くなる一方だ。悲劇も増えるばかりだ。科学じゃ、心はわからないからね。僕らが博物館に行くのも、つまりは、心を理解するためなんだ。人が人のよさを知るためだ。僕はこれを言うと袋叩きにされるんだけど、――僕、海外から帰ってきてから評判が悪くてね、もうお手上げなんだ。でも、僕みたいなこと言う人がいなきゃ、国もダメになるよ。世界もだ」

原文 (会話文抽出)

「中国はフランスと非常に似ているだろう。ね、パリなんて、あれは君、中国じゃないか。しかし、僕はフランスより中国の方が、文明の度は少し高かったと思うんだよ。何ぜかというと、フランスという国は、見れば分る幾何学の国だ。実にはっきりしていて合理的だ。幾何学を数に代えたのが代数だから、つまり、さっきも云ったとおり代数の国だといってもいいさ。しかし、中国はそうじゃない。あれは妙な変数みたいなものだよ。」
「しかし、中国と危くなって来たというのは、事実だろうな。これでフランスの共産党があんなに勢いを得て来た以上は、世界の均衡は破れたも同じだから、破れ口は西安で、蒋介石の頭へのぼって来たのかもしれないね。」
「けれども君、そんなことは、僕らがいかに心配したって駄目なことだよ。」
「僕らにとって究極の大切なことは、ソビエットみたいに人間に科学性を与えることよりも、中国みたいに想像力を人間に与えることだよ。人間の精神を知らすことさ。互にどこも科学ばかりが発達して、相手の精神を知らずにいちゃ、人と人との間の政治は悪くなるばかりじゃないか。そんなら悲劇は増すばかりだ。科学じゃ、精神は分るものじゃないからね。僕らがこうして博物館へ行くのも、つまりは、精神を知りに行くということだよ。人間が人間の良さを知りに行くというもんだろ。僕はこれを云うと、人から袋叩きにされるんだが、――君、僕は外国から帰ってから評判がひどく悪くなってね、手も足も出ないのさ。しかし、一人ぐらいは僕のようなことをいうものもいなきゃ、その国は駄目になるよ。国だけじゃない、世界もだ。」

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