横光利一 『旅愁』 「とにかく、あれは世界戦争の始まりだよ。も…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

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「とにかく、あれは世界大戦の始まりだよ。もう戦争は始まってる。対岸の火事じゃないよ。」
「ヨーロッパももう限界かな。今度は本当の東洋の津波だよ。僕らはウロウロしてる場合じゃない。」
「久慈はどうした?無事でしょ。」
「ああ、あれはまだ子供で困ったもんだ、パリでフラフラしてるよ。」
「でも、あの人ほどフランスを愛せる人がいるんだと思うと、フランスがうらやましくなるね。僕はあの三分の一でも日本を愛してくれたらなって思ったけど、愛ってのは、こ奴はどうしようもないものだ。そんなのがもしフランスにあるなら、フランスもちょっとは日本を愛してくれるかなって、最近思ってるんだ。――実際そうだろ。日本にラフカディオ・ヘルンがいたおかげで、僕ら日本人はどれだけギリシアに感謝したか考えてみろよ。」
「いいな、僕も若い頃に帰ってこれたら良かった。いや、僕は忠義を尽くすよ。誠忠――僕らにはこれしかない。これは本当に素晴らしいものだよ。でも、みんな勘違いして、こせこせしたちっぽけなものだと思ってる。これは一番気をつけないといけないことだね。とにかく、あのちまちました日本精神だけは、一番の反日精神だよ。」
「僕は海外を旅しながら、日本精神についてずっと考えてきたんだけど、結局のところ、日本精神ってのは、人を許すってことだと思うんだ。怒るときは怒るよ、でも、その中に、怒ってしまったらパッと怒りを洗い流すような、あの大らかな力があるんだよ。それが日本精神さ。それが大和ごころっていう美しい光なんだよ。あれがなきゃ日本は闇だ。滅ぶ方がマシ。諸君、青年たちは、この美のために立ち上がれよ。それだけがもう諸君の心を美しくするんだ。そのどこが偽りなのか。」
「やるよ、やるよ。」

原文 (会話文抽出)

「とにかく、あれは世界戦争の始まりだよ。もう戦争は起っている。対岸の火事じゃないよ。」
「ヨーロッパももう底を突いた。今度こそはいよいよ東洋の海嘯だよ。僕らはうろうろしているときじゃない。」
「久慈はどうしました。無事ですか。」
「ああ、あれはまだ子供で困ったものだ、パリで逍遙していたよ。」
「しかし、僕はあの人ほどフランスを愛することの出来る人がいるんだと思うと、フランスが羨ましくなったね。僕はあの三分の一でも日本を愛してくれればなアと思ったが、愛というものは、こ奴はどうしょうもないものだ。そういうところがもしフランスにあるのなら、フランスだって少しは日本を愛してくれるだろうと、このごろ思い直しているんだが。――実際そうだよ。日本にラフカディオ・ヘルンがいたために、どんなに僕ら日本人はギリシア人に感謝したか思って見給え。」
「いいなア、僕も芽の出るころに帰って来たのか。いや、僕は忠義を竭すよ。誠忠――これ以外に僕らにはあり得ない。これは実に豊かなものだよ。ただ人はこれを間違えて、こせこせしたものだと思うようにさせる傾向のあるのは、もっとも慎しむべきことだね。とにかく、あのこせこせした日本精神だけは、一番激しい非日本精神だよ。」
「僕は外国を歩きながら、日本精神ということを絶えず考え通して来たがね、とどのつまりは、日本精神ということは、人を寛すということだと思ったね。それや怒るときは怒るがね、しかし、そこにまた何んというか、怒ってしまうと、ぱっと怒りを洗う精神が波うって来るそのおおらかな力だよ。それが日本精神さ。それが大和ごころという優雅な光りものだよ。もしそれが無ければ日本は闇だ。滅ぶ方がいい。諸君青年はこの美のために立てよ。ただそれだけがもう諸君の精神世界を美しくするのだ。そのどこにいったい嘘があるのか。」
「やるよやるよ。」

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