横光利一 『旅愁』 「しかし、僕は困りましたよ。お父さんがむか…

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「でも、僕は困ったよ。お父さんが昔、久木さんの会社にお世話になったこと、どうしても言えなくてね」
「あなた失礼なことしたんじゃないでしょうね。お父さんそれを一番心配してらっしゃるの」
「したかもしれないな」
「お父さんは、耕一郎は時々生意気なことを言うから、あいつ、またバカなことを言ってるんだろうなあって、そうおっしゃってるよ」
「でも、あの男爵は、僕に恥をかかせて後悔させない人ですよ。そういう人はあまりいないですからね。それは僕だって、少しはいい気持ちになりますよ」
「そんなことは私に言わずに、お父さんに言ってごらんなさいよ」
「オヤジにはダメだ。僕が男爵と話をしたこと自体が、もう失礼なことしたと、思う人ですからね。僕が挨拶を忘れたことなんて話したらダメだよ。ひどいお説教だ」
「それやいけませんね。そんなこと知れたらお父さん――」
「この次挨拶に行ったら、もう遅いし。どうしたんだろう昨夜は――まあ、言わない方が、その場の礼儀に合ってる気がしたもんだから」

原文 (会話文抽出)

「しかし、僕は困りましたよ。お父さんがむかし、久木さんの会社のお世話になったこと、どうしても云えなくってね。」
「あなた失礼なことしたんじゃないんでしょうね。お父さんそれを一番心配してらっしゃるの。」
「したかもしれないなア。」
「お父さんは、耕一郎はときどき生意気なことを云うから、あ奴、また馬鹿なことを云いよったのじゃないかなアって、そうお云いよ。」
「しかし、あの男爵は、僕にぼろを出させて後悔をさせない人ですよ。そういう人はあまりいないですからね。それや僕だって、少しはいい気持ちになりますよ。」
「そんなことはあたしに云わずに、お父さんに云ってごらんなさいよ。」
「おやじには駄目だ。僕が男爵と物を云ったことが、すでにもう無礼なことをしたと、思う人ですからね。僕がお礼を云い忘れたことなど話しちゃいけませんよ。ひどいお目玉だ。」
「それやいけませんね。そんなことなどしれちゃお父さん――」
「この次お礼を云ったんじゃ、手遅れだし。どうしたのか昨夕は――まア、云わない方が、その場の礼儀にかなっているような気がしたものだから。」

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