横光利一 『旅愁』 「僕たちは人より一つ、余計なことで苦しまね…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「俺らって人より一つ、余計なことで悩まなきゃいけないのってよくないっすよ。こんなことどうにもならんって分かれば、分かった範囲でどうにかしなきゃ、俺はつまんないと思うんすよ。――あんたを嫌いだから虐めてるわけじゃなし、――」
「あなたはあたしのそんな悲しみ、知りませんもんね。あなたのお母さんのことを思うと、きっと、あたし、叱られてばっかりだって思えて、それが悲しいんすわ。あなたはお母さんの味方ばっかりするんだから、決まってるんすし――」
「でも、不思議と、女の人って、いい宗教でもダメにする癖があるんすかね。俺の母ちゃん見ても、子供の俺でも困ることがあるんすよ。俺の父ちゃんは家代々の真宗なんすけど。母ちゃんだけ法華なんすよ。それは、母ちゃんの実家が法華なんで、小さい時から南無妙法蓮華経で育ったからでしょう。だから、俺の父ちゃんの所へ来てからも、南無阿弥陀仏じゃどうしても有難さを感じられないらしくて、そこで1人いつも悩んだらしいんすよ。実際それは、真面目になればなるほど辛いはずなんすよ。でも、いい加減に捨てても置けないことでもあるしして、今でもそこに、なんか、父ちゃんとの中で揉めてるものがあるんすよ」
「じゃ、あなたはどっちなんですか」
「俺は古神道です」
「でも、それは宗教じゃないですよ。神道とも違います」
「古神道って、何なのよ、あたし初めて聞いたわ」

原文 (会話文抽出)

「僕たちは人より一つ、余計なことで苦しまねばならぬとはいいことじゃないですよ。こんなことは始末につかないことだと分れば、その分ったことの範囲で何んとかしなくちゃ、僕はつまらぬと思うんだが。――何もあなたを嫌いで僕が虐めているわけじゃなし、――」
「あなたはあたしのそんな悲しみ、御存知ないんですもの。あなたのお母さんのことを思うと、きっと、あたし、叱られてばかりだと思えて、それが悲しいんですわ。あなたはお母さんの味方ばかりなさるの、定っているんだし――」
「しかし、どういうものか、女の人というものは、良い宗教でも邪宗にするくせがあるんじゃないかな。僕の母を見ていても、子供の僕でさえ困ることがあるんですよ。僕の父は家代代の真宗なんですがね。母ひとりは法華なんです。それというのは、母の実家が法華なものだから、小さいときから南無妙法蓮華経で育ったでしょう。ですから、僕の父の所へ来てからでも、南無阿弥陀仏ではどうしても有難さを呼び醒すことが出来ないらしいので、そこでひとりいつも苦しんだらしいのですよ。実際それは、真面目になればなるほど苦しいにちがいないんだし、そうかといって、良い加減に捨てても置けないことでもあるしして、やはり今でもそこに、何か、父との間でごたごたしているものがありますね。」
「じゃ、あなたはどちらですの。」
「僕は古神道です。」
「しかし、これは宗教じゃないですよ。神道とも違います。」
「古神道って、何なのかしら、あたし初めて聞いたわ。」

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