横光利一 『旅愁』 「僕の知人で一人、日本へ帰ると一ヵ月東京に…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

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「俺んちの知り合いに、日本帰ったら1か月も東京にいてすぐパリ戻ってきた奴がいるんすよ。そんでもって、真逆で、日本からパリ着いたら次の日にパリがイヤになって半月後で日本に帰っちゃった奴もいんすよ。人間って、ホントいろいろっすね」
「なんでそんな違うんスかね?」
「それが、俺にもわかんないですけど――なんつっても、地球って球体じゃん。日本って中から外に出るのと、外から中に入るのと、なんか違うような気がするっすよ」
「つまり、例えば千鶴子さんが外国に行くのと、俺が行くのとじゃ、思いとかだいぶ違ってくると思うんすよ。千鶴子さんは、小さい時からカトリックの教育で行くんで、そういう人は、外国行っても実際には中から外に出るってことだから、俺みたいな日本人の教育のままじゃ、外から中に入るってことになって、同じ行くでも感覚が違ってくるんすよ。物理学でも確か、球面を外から中に入るのと、中から外に出るのとで違いがあって、2つの相違があったはずっすけど、どうッスか?」
「それ、あります」

原文 (会話文抽出)

「僕の知人で一人、日本へ帰ると一ヵ月東京にいたきり、すぐまたパリへ来てしまったのがいますがね。ところが、またそれとは反対のもいて、日本からパリへ着くと、次の日にもうパリがいやになって、半月目に日本へ戻ってしまったのもいますよ。人というものは、いろいろなものだなアこれで。」
「どうしてですかね。そんなに違うの。」
「さア、それは僕も分りませんが――やはり、地球という球体を日本という中から外へ出ることと、外から中へ入ることと、違うようなものじゃありませんか。」
「つまり、たとえば千鶴子さんが外国へ行かれるのと、僕が行くのとでは、これで思いも余程違っていると思うんです。千鶴子さんのは、小さいときからのカソリックの躾けで行くので、そういう人のは、外国へ行くと言っても実は中から外へ出ることで、僕のような日本人の躾けのままだと、外から中へ入ることになるのですから、同じ行くにも感覚からして違って来ますからね。物理学にもたしか、球面を外から中へ入るのと、中から外へ出る違いと、二つの相違があったと記憶してますが、どうですか。」
「それはあります。」

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