横光利一 『旅愁』 「いいお湯でしたわ。お入りになりません。」…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「いいお湯でしたね。入りませんか？」
「早く入ると湯冷めしやすい体質なんだよね。でも、ここの温泉はいいね。特に朝がいいよ。」
「でも、根性ありますよね。自炊を続けてらっしゃるなんて。お風呂の中で槙さんと話してたんですよ。」
「じゃあ、明日の昼は二人をお招きしますよ。山の料理を食べてもらいますか。」
「昼？」
「まあ、嬉しいわ。楽しみにしています。どんな料理かしら。」
「雪の中の手料理ですからね。東京で作るのとは違うけど、チロルの山小屋よりはマシかもしれないな。」
「あのときは何だったっけ。スープとジャガイモとソーセージ、そうだったかな。」

原文 (会話文抽出)

「いいお湯でしたわ。お入りになりません。」
「早く入ると僕は湯ざめのするたちでね。しかし、ここの湯は良いでしょう。殊に朝がいいんだが。」
「でも、お豪いわ。自炊をつづけてらっしゃるの、お風呂の中でさきも、槙さんとお話してましたのよ。」
「じゃ、明日のお昼はひとつ、お二人を御招待しますよ。山の御馳走召し上ってもらいましようか。」
「お昼？」
「まア嬉しいわ。お待ちしてましてよ。どんな御馳走かしら。」
「何しろ雪の中の手料理ですからね。東京で作ったのとは違うが、チロルの山小屋のときよりは少しはましかもしれないな。」
「あのときは何んだったかしら。スープとお馬鈴薯と、ソセージ、ね、たしかそうだったわ。」

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