横光利一 『旅愁』 「あたしこんなに幸福でいいのかしら。こんな…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「こんなに幸せでいいのかな。こんな幸せって、いつまでも続くのかな。」
「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな。」
「矢代さん、あなた私の手紙見てくださいましたか。アメリカから出しました。」
「2通もらったよ。いや、3通だったかな。」
「じゃ、私の出した半分だわ。どうしたんですか?」
「いや、どうもありがとう。」
「私ね。あなたがもう帰ってると思ってたんですよ。でも、ずっと黙ってるんで。私、この間からずっと、いつになったら帰ったって手紙が来るか待ってたんだけど、――」
「いや、とにかく、そういうことじゃなかったんだよ。」
「だって、あんなに約束してたのに。そんなことまで忘れちゃう方だなんて、信じられないわ。」
「まあ、失礼したのは確かだけど、考えてみてよ。こっちに帰ってきたら、向こうにいるときと同じように振る舞えないし、それを私はパリでお別れするときにも言ったはずなんだけど、向こうとこっちがこんなに違うとは思ってなかったから、そこが失礼になったんだ。」
「あ、そういうことあるよね。私も経験した。」
「そうなの?」
「そうだよ。それだけだよ。」
「それにしてもね。」
「いや、いや、あなたの勘違いだよ。『おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな』。」

原文 (会話文抽出)

「あたしこんなに幸福でいいのかしら。こんな幸福は、いつまでもつづくものかしら。」
「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな。」
「矢代さん、あなたあたしの手紙御覧になって下さいまして。アメリカから出しましたの。」
「二通いただきました。いや、三通かな。」
「じゃ、あたしの上げた半分だわ。どうしたんでしょう。」
「それはどうも、たびたび有りがとう。」
「あたしね。あなたがもう帰ってらっしゃるにちがいないと思ってましたのよ。でも、いつまでも黙ってらっしゃるんですもの。先日からあたし、いつになったら帰ったというお手紙いただけるかと、そればかり待ってたんだけど、――」
「いや、とにかく、そんなことじゃなかったんですよ。」
「だって、あんなにお約束しておいたんですもの、まさか、そんなことまでお忘れになる方だとは、あたし思えないわ。」
「しかし、まア、失礼はたしかに僕もしましたが、考えてもみて下さいよ。いくら僕だって、向うにいるときのそのまま、こちらでまで出来ないし、そんなこと、僕はもうパリでお別れのとき云った筈ですが、ところが、あのときはこんなにまで向うとこちらが違うものだとは思わなかったので、ついそこが失礼することになったのですよ。」
「そうそう、そういうことがあるなア。僕もあった。」
「そんなものかしら。」
「そうなんですよ。それだけですよ。」
「それにしてもだわ。」
「いや、いや、あなたの間違いさ。面白うてやがて悲しき鵜舟かな。」

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