横光利一 『旅愁』 「沖さん、矢代はね、なかなかこ奴不良になら…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「沖さん、矢代はね、なかなかこいつ不良にならないんですよ。あなた意見をしてやって下さいよ。嘘つきだこいつ」
「あなた、外国に来て不良にならないんですか。こいつらもちょっと不潔だな」
「でも、何んです。こっちへ来ると思うよりも興味はなくなりますな。殺風景で面白くない。そうそう私は昨夜面白い青年に会いましたよ。どっかダンスホールへ連れて行けと云ったら、チケット制のダンスホールへ連れて行って踊っているうち、ああ驚いたと云って席へ戻って来て、こう云うんですよ。今自分と踊っていたあのダンサーは、あれは自分が二年前に同棲していた女だと云うのです。ところが、その女とその晩三度も踊っていて、まだ昔の女だとは気がつかなかったんですね。二度目に女がにっこり笑うもんだから、変な笑い方をする女だと思っていると、三度目に、あなた忘れたのと云ったというのです。もうみんな、頭が変になってますよ。不良のどうのと云ったところで、不良ならまだ良い方じゃ。この青年は25、6で、まあ日本人の50か60の男の経験をしてしまってるんですな。あのまま人間が50か60になったら、そら恐ろしいことになりますぜ」
「そうすると、僕たちは強みだ。まだ若いぞ」
「そうそう。あなた方はまだ若い。私はもうそれが何より羨ましい」

原文 (会話文抽出)

「沖さん、矢代はね、なかなかこ奴不良にならんのですよ。あなた意見をしてやって下さいよ。嘘つきだこ奴。」
「あなた、外国へ来て不良にならんのですか。そ奴も少し不衛生だなア。」
「しかし、何んです。こっちへ来ると思うたよりも興味はなくなりますな。殺風景で面白うない。そうそう私は昨夕面白い青年に会いましたよ。どっか踊場へ連れて行けと云うたら、切符制度の踊場へ引っぱって行って踊っているうち、ああ驚いたと云って席へ戻って来て、こう云うんですよ。今自分と踊っていたあの踊子は、あれは自分が二年前に同棲していた女だと云うのです。ところが、その女とその晩三度も踊っていて、まだ昔の女だとは気が附かなかったんですね。二度目に女がにっこり笑うもんだから、妙な笑い方をする女だと思っていると、三度目に、あなた忘れたのと云うたというのです。もうみんな、頭が妙な風になっとりますよ。不良のどうのと云ったところで、不良ならまだ良い方じゃ。この青年は二十五六で、まア日本人の五十か六十の男の経験をしてしまっとるですな。あのまま人間が五十か六十になったら、そら恐ろしいことになりますぜ。」
「そうすると、僕らは強味だ。まだ若いぞ。」
「そうそう。あなた方はまだ若い。わたしはもうそれが何より羨ましい。」

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