横光利一 『旅愁』 「お珍らしいな。旅行は案外早かったようです…

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「お珍しいな。旅行は案外早かったみたいですね」
「でも楽しかったわ。チロルは忘れられない。本当にいい所よ」
「あら、あんなとこで日向ぼっこしてるわ」
「フランスは田舎のどこへ行っても雑草がないからな。屋根の上に雑草を植えてそこを草原にしようっていう趣向なんだ。これだけ日本と違うんだから、どうも僕らはついていけない」
「変な国ね、フランスって」
「変じゃないよ。結局どこだってこうなるんだから、まあ登り詰めたシュールレアリスムはこういうものだと思えば、何もかも面白い。矢代はあれは、面白さを理解しようとしないんだからな。あれもまたどうしてあんなに、殺風景な男になっちまったものだろう」
「そうかしら」
「そうかしらでもないだろう。悪ければまあお許しを願うが、――どうしてまた君は矢代を動かさなかったんです。チロルまで後を追いかけていって、結婚の準備一つもして来なかったなんて、何んだ、他愛もない」
「僕は君さえ気にしないならいくらだって頑張るけれども、どっちも何も言わないから、押してみようがない。一人でああかな、こうかなと思ってるだけで、一番馬鹿を見るのはどうも僕のような気がするんですよ。え、どうなんです、一体?」
「私も分からないわ。そんなこと」
「でも君、どっちも好意をそんなに持ち合ってるくせに、どっちも隠してるというのは意味が分からないね。それともまだそんな風に物静かにしている方が楽しいというのならこれは別だが、そういう風流なお二人とも見えないや」
「何だかお一人で騒いでいらっしゃるのね、面白い方だわ、あなた」
「とにかく君たちは、僕とは恐ろしく趣味が合わない人たちだよ、古典派というのかね。お行儀はいいよ」

原文 (会話文抽出)

「お珍らしいな。旅行は案外早かったようですね。」
「でも面白かったわ。チロルはあたし忘れられない。ほんとにいい所よ。」
「あら、あんなとこで日向ぼっこしてるわ。」
「フランスは田舎のどこへ行っても雑草というのがないからな。屋根の上へ雑草を植えてそこを野原にしょうという趣向なんだ。これだけ日本と違うんだから、どうも僕らは追っつけたものじゃない。」
「へんな国ね、フランスって。」
「へんなことはないさ。終いにはどこだってこうなるんだから、まア登り詰めた超現実主義はこういうものだと思えば、何もかも面白い。矢代はあれは、面白さを理解しようとしないんだからな。あれもまたどうしてあんなに、殺風景な男になっちまったものだろう。」
「そうかしら。」
「そうかしらでもなかろう。悪ければまアお赦しを願うが、――どうしてまた君は矢代を動かさないんです。チロルまで後を追っていって、結婚の準備一つもして来なかったなんて、何んだ、他愛もない。」
「僕は君さえ介意わないならいくらだって骨折るけれども、どっちも何も云わないのだから、押してみようがない。一人でああかな、こうかなと思ってみているだけで、一番馬鹿を見るのはどうも僕のような気がするんですよ。え、どうなんです、いったい?」
「あたしも分んないわ。そんなこと。」
「しかし君、どっちも好意をそんなに持ち合っているくせに、どっちも隠しているというのは無意味だと思うね。それともまだそんな風に物静かにしている方が楽しみが多いというのならこれや別だが、そういう風流なお二人とも見えないや。」
「何んだかお一人で騒いでいらっしゃるのね、面白い方だわ、あなた。」
「とにかく君たちは、僕とは恐ろしく趣味の反対な人たちだよ、古典派というのかね。お行儀はいいよ。」

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