横光利一 『旅愁』 「このあたりはびっくり箱だね。」…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「このあたりってびっくり箱だな」
「機関銃で撃ち合うって、それはどこだ。それもびっくり箱の中か」
「夜中にこのあたりのギャングたちが、縄張り争いでやり合うらしいよ。でも、東野さん、あれって本当にやるんじゃなくて、乗客サービスの食事でやってるんじゃないですか。どうもこのあたりはちょっと怪しい」
「それは、自分が知らないうちにサービスしてくれてるんだよ」
「いや、案外これで市役所から給料でも貰ってて、さっきのカフェじゃないけど、実演の芸をやってるのかもしれないよ」
「でも、芸にしたって死ぬ芸だから芸にはならん。生きてこそ芸だからな。さっきのあんなのはあれは、あまりに生きすぎて間違ったんだ。芸はどこか一点だけ殺さなきゃ嘘だ」
「とにかく、今夜はその機関銃を一つ見届けようか。それとも、本物の女を見に行くか。どうも今夜は少し自然に帰りたいね」
「とうとう本性を表したな。でも、あそこのカフェが本物の女だったら、僕らは今ごろこんなお寺の近くなんかいられるもんか」
「じゃあ、今夜は極楽浄土に行くことにしようか。でもどうも、議論のない世界ってのは面白くないものだな。仕事がなくなったみたいで。やたら仲良くなるのは、これって、神様何か間違ってるぞ」
「このお寺を山の上につくるだけで、どんなにパリの人間が苦労したか知れないんだから、毎日くらい機関銃は撃たれるもんだ。昔の人の苦労を忘れちゃ罰があたるぞって、お説教してるようなもんだ」
「東野さん、あなたもやっぱり、人間の苦労がばかばかしく見えますか? たまに僕もあるんだけど」
「いや、それは、僕がまずせっせとばかばかしい苦労をしたからだけど、でも、誰か一人がばかなことをすれば、いいことをしてる人でも人間は同じ罪になるらしい。そこが人間の面白さじゃないかな。とにかく、もう降りよう。それから今夜は一つ、君らのその自然に還るところを見せてもらいたいもんだな」
「よし、人間は同じ罪だ。行こう」
「そこで真剣勝負だぞ」

原文 (会話文抽出)

「このあたりはびっくり箱だね。」
「機関銃で撃ち合うというのは、それやどこだ。それもびっくり箱の口か。」
「夜中にこのあたりのアパッシュ連中、縄張り争いでやり合うらしいんだよ。しかし、東野さん、それや本当にやるんじゃなくって、旅客優待の御馳走でやってるんじゃないですか。どうもこのあたりは少少怪しい。」
「それや、自分で識らずに優待していてくれるんだよ。」
「いや、案外これで市役所から月給でも貰っていて、さっきのカフェーじゃないが、実演の芸をやってるのかもしれないね。」
「しかし、芸にしたって死ぬ芸だから芸にはならん。生きてこそ芸だからな。さっきのあんなのはあれは、あんまり生きすぎて間違ったんだ。芸はどこか一点だけ殺さなきア嘘だ。」
「とにかく、今夜はその機関銃を一つ見届けようか。それとも、本物の女を見にいくか。どうも今夜は少し自然に還りたいね。」
「とうとう甲を脱いだな。しかし、あそこのカフェーが本物の女だったら、僕らは今ごろこんなお寺の前なんかにいられるもんか。」
「じゃ、今夜は極楽往生としとくかね。どうもしかし、論争のない世界という奴は面白くないものだな。仕事がなくなったみたいで。いやに仲ばかり良くなるのは、これや、神さま何か間違ってるぞ。」
「このお寺を山の上へ建てるだけで、どんなにパリの人間馬鹿な苦労をしたか知れぬのだからね。毎晩機関銃ぐらいは鳴ろうというものだ。むかしの人の苦労を忘れちゃ罰があたるぞと、お説教しているようなものだ。」
「東野さん、あなたもやっぱり、人間の苦労が馬鹿に見えることがありますかね。ときどき僕にもあるんだが。」
「いや、それや、僕が第一、せっせと馬鹿な苦労をしたからだが、しかし、誰か一人が馬鹿なことをすれば、良いことをしているものでも人間は同罪になるらしい。そこが人間の面白さじゃないかな。とにかく、下へもう降りよう。それから今夜は一つ、君らのその自然に還るところを見せてもらいたいものだな。」
「ようし、人間は同罪だ。行こう。」
「そこで真剣勝負だぞ。」

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