横光利一 『旅愁』 「やア、いつ帰った?」…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「よっ、いつ戻ったんだよ?」
「つい今。」
「でもよ、東野さん」
「僕たちって、日本に帰った後のことよりも、ずっとここに住むつもりで自分のこと考えたほうが、こっちにいるうちはいいと思うっす」
「見てよ、今日は散々なんだよ」
「あなたですか」
「そう、あっちなの」
「バカ言え」
「この東野って奴、矢代と似たようなこと言うんだよね。でもあんたよりちょっと上手いんだ。別に僕は世間の意見に興味ないから、世界で通用しない話なんて、するだけ損だと思うわけ。でもあんたとか東野さんは、日本だけで通用するような話ばっかり引っ張り込んで、僕の息の根止める計画ばっか夢中になってる。僕ら日本人の考えを、日本でしか通用してないのに偉そうにしてるから、一番日本がダメになるんだよ。もう決まってるじゃん、どこが間違ってるの?」
「自分を間違えたやつが、世界を救おうとするわけですか」
「どういう意味?」
「あんたは日本を愛してるんじゃなくて、日本に恋してるだけなんだよ。恋には常識なんて通用しないよ」
「常識が通用しないこともあるって、やっと分かったんだろ」
「それで日本が滅びるってわけさ」
「日本を滅ぼす奴は、もう出てるかもな」

原文 (会話文抽出)

「やア、いつ帰った?」
「今だ。」
「しかし、東野さん。」
「僕らは日本に帰ってからの自分について考えるよりもですね、もうこれから永久にここにいるんだと思って、自分のことを考える方が、こちらにいる限り有益だと思いますがね。」
「この通り、今夜はやられてるんですよ。」
「あなたがですか。」
「勿論、お向いさ。」
「馬鹿云え。」
「この東野という人はね、矢代とよく似たようなことを云うのだ。ただ君より一寸落し方が上手だよ。だいたい、僕は日ごろから天下の公論に興味を覚える方だから、世界に通用する話じゃなくちゃ、話したって損するだけだと思うんだ。ところが、君や東野さんは、日本でだけより通用しそうもないことばかりに、話を引っ張り込んで、僕の呼吸を停めてしまう計画ばかりに夢中になるのだ。僕ら日本人の考えを、日本でだけ通用させて得得としていられる了簡が、一番日本を誤るもとだ。それや、もう定ってるじゃないか。そのどこに誤りがあるんだ。」
「自分を誤ったものが、世界を救おうってわけか。」
「何んだそれや。」
「君は日本を愛しているのじゃない。日本に恋愛をしているのだ。恋愛だけは科学の歯は立たんからね。」
「歯の立たんものもあるというのが、やっとこのごろ分ったんだろ。」
「そ奴が日本を滅ぼすというのだよ。」
「日本を滅ぼしかけてる奴は、もうそろそろ出てるかもしれんぞ。」

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