横光利一 『旅愁』 「君の云うことはいつでも科学というものを無…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「お前の言うことは科学無視の屁理屈だ。科学主義を無視すれば、どんなトンデモ発言でも平気でできるよ。パリに科学を重んじる精神がなかったら、こうも発展してないし、自由の考え方も広まってないだろうに。」
「科学か。科学ってのは、結局誰も何もわかってないってことだよ。これ分かれば、戦争なんて起きねぇよ。」
「じゃ、俺らは誰を信じるんだよ。科学まで否定したら、人間どうすりゃいいんだ?」
「ヨーロッパまで来て、そんな当たり前のことしか言えねぇのか?科学なんて、日本にいても考え付くよ。」
「知識失って喜べるなんて、病気だ。病気じゃなきゃ、みんながわかるような間違いには反対できねぇだろ。」
「間違ってるって言ってるんじゃねぇよ。当たり前のことなんて、お前から聞きたくねぇだけだ。分かってることを、間違いなく言ったって意味ねぇじゃん。」
「じゃ、間違いを言えってか?」
「お前みたいな、科学を道具みたいに使う奴には、俺の言ってることは間違いに見えるだけだ。俺はむしろ、お前より科学主義者だからこそ、お前みたいなペラッペラな科学論は言いたくないんだ。科学ってのは、今の時代のご神体様みたいなもんだ。それがわかれば人間終わるよ。」
「そんな科学主義なんてあるかよ。」
「随分変わったわね。毎日パリでそんなことばっか言い合ってたの?」
「まぁ、そう。こっちはこんな言い合いが楽しみみたいなもんよ。気にしないで。」
「じゃ、あたしもこれから毎日そんなこと聞かなきゃいけないの?嫌だわ。」
「あなたが来たら、言わないようにするよ。」
「いや言うわよ。」

原文 (会話文抽出)

「君の云うことはいつでも科学というものを無視している云い方だよ。君のように科学主義を無視すれば、どんな暴論だって平気に云えるよ。もしパリに科学を重んじる精神がなかったら、これほどパリは立派になっていなかったし、これほど自由の観念も発達していなかったよ。」
「科学か。科学というのは、誰も何も分らんということだよ。これが分れば、戦争など起るものか。」
「そんなら僕らは何に信頼出来るというのだ。僕たちの信頼出来る唯一の科学まで否定して、君はそれで人間をどうしょうと云うのだ。」
「君はヨーロッパまで出かけて来て、そんな簡単なことより云えないのかね。科学などということは、日本にいたって考えつけることじゃないか。」
「君はそれほど知識を失ってしまって得意になれるというのは、それやもう、病気だ。病気でなければ、そんな馬鹿な、誰でも判断出来る認識にまで反対する筈がないじゃないか。」
「僕は君の云うことを、間違っていると云うんじゃないよ。そんな、誰にでも分っていることなど、何も君からまで聞きたくないと云うだけだよ。分りきったことを、間違いなく云えたって人間この上どうともなるものか。」
「そんなら、君みたいに間違いを云えと云うのか。」
「僕の云うことは、君のような、科学をまじないの道具に使うものには、間違いに見えるだけだと云うのだよ。僕は君より、もっと科学主義者だと思えばこそ、君のように安っぽく科学科学といいたくないだけだ。君は科学というものは、近代の神様だということを知らんのだよ。それが分れば人間は死んでしまう。」
「ふん、そんな、科学主義あるかね。」
「随分お変りになったのね。毎日パリでそんなことばかり云い合いしてらしたの。」
「まア、そうです。ここじゃ、こんな喧嘩は楽しみみたいなものですから、気にしないで下さい。いつでもです。」
「じゃ、これからあたし、毎日そんなことばかり伺わなくちゃならないのかしら。いやだわね。」
「あなたがいらっしゃれば、云わないような工夫をしますよ。」
「いや云うとも。」

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