森鴎外『伊沢蘭軒』「廿五日。（三月。）晴。花影童女五十回忌に…

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青空文庫図書カード: 森鴎外『伊沢蘭軒』

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「廿五日（三月）。晴れた。花影童女さんの五十回忌で、柏の賢忠寺にお参りしたよ。」
「十一日（五月）。雨。徳を今日から岡にやった。十八史略の講義を聴くんだ。」
「廿四日、雨。昨日安石が隠居願を出したらしい。」
「廿二日（七月）。晴れた。待蔵に寛斎さんが来たよ。」
「廿九日（八月）。雨。成田竜玄さんが昨夜亡くなったんだって。今日お葬式だから、徳がお参りに行ったよ。」
「三日（九月）。曇り。河合さんちに行った。この前の晦日に友翁さんの奥さんが亡くなったって。」
「廿四日、晴れた。岡寛斎さんが近々東京に行くそうだから、飯田さんの家で送別会をしたよ。」
「廿五日、晴れた。森さんちに行ってお祝いした。森家では年内に東京に引っ越すらしいから、相談したんだ。」
「廿六日、晴れた。今朝岡寛斎さんが出かけるはずだったのに、夜に潮が引くまで延期になったんだって。だから、もう一回お祝いしたよ。」
「廿八日、晴れた。徳を啓蒙所の夜会に出したよ。」
「十六日（十一月）。晴れた。夜に雨が降った。柏が髪を切ったよ。」
「廿一日、晴れた。冬至。東京の森養竹さんから手紙が来たよ。」
「森さんちに行った。森家の引っ越しについて、大黒屋の直右衛門さんのところへ行った。」
「森さんちに行った」
「明治五年壬申二月辞福山、漫遊諸州、五月至東京、是月廿七日補文部省十等出仕」
「二日（十二月）。晴れた。夜に雨が降った。これからは旧暦じゃなくて太陽暦を使うことになって、明後日の一日から一月一日になるんだって。」
「明治五年七月東京第一大区十一小区東松下町三十七番地工部省七等出仕塩田真方寄留」

原文 (会話文抽出)

「廿五日。（三月。）晴。花影童女五十回忌に付、柏賢忠寺参詣。」
「十一日。（五月。）雨。徳今日より岡へ遣す。十八史略講義聴聞也。」
「廿四日。雨。昨日安石隠居願済。」
「廿二日。（七月。）晴。待蔵事寛斎来。」
「廿九日。（八月。）雨。成田竜玄昨夜物故、今日葬送、徳代参遣す。」
「三日。（九月。）陰。河合へ行。去晦日友翁妻病死之悔。」
「廿四日。晴。岡寛斎近日東京出府に付、於飯田宅別杯相催す。」
「廿五日。晴。森へ行飲。同家年内東京転移に付、一切相談也。」
「廿六日。晴。今暁岡寛斎出府乗船之処、夜汐に延引之由、再行飲。」
「廿八日。晴。徳啓蒙所夜会に出す。」
「十六日。（十一月。）晴。夜雨。柏断髪す。」
「廿一日。晴。冬至。東京森養竹より書状到来。」
「森へ行、同家引越一条に付、大黒屋直右衛門方へ行」
「森へ行」
「明治五年壬申二月辞福山、漫遊諸州、五月至東京、是月廿七日補文部省十等出仕」
「二日。（十二月。）晴。夜雨。今般大陰暦御廃し、太陽暦御採用に付、明三日より一月第一日と御改正被仰出。」
「明治五年七月東京第一大区十一小区東松下町三十七番地工部省七等出仕塩田真方寄留」

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