森鴎外 『伊沢蘭軒』 「わたくしは柏軒先生に再説することの難いの…

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青空文庫図書カード: 森鴎外 『伊沢蘭軒』

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「先生に言っても無駄なのはわかってた。でも、志村は絶対に必要だって思ったから、数日後にまた先生を訪ねた。まだ夜明け前だったから、先生は寝てた。俺が枕元に行って、」
「先生、前にちょっと言ったんですけど、志村を京都に連れてってくれませんか?」
「なんだ、志村は連れてかないって言ったじゃないか!」って先生は飛び起きて、怒った顔してた。俺はその場を去った。」
「でも、京都で何かあったら、先生と老中・水野和泉守忠精の間を取り持つのは志村しかいない。たとえ先生に怒られて破門されても、もう一度説得してみようと思った。」
「次の日に3回目、先生を訪ねてこう言った。「先生、しつこくてすいませんが、どうしても志村を連れて行ってください」。」
「先生の怒りを覚悟してた。でも、先生はしばらく俺を見つめて、「そんなに熱心か。まあ、なんとかなるだろう」って。俺は「ありがとうございます」って言って席を立った。」
「先生が立つ直前に、お玉が池の家に行って、お春さんに「お供は誰に決まりましたか?」ってそっと聞いたんだ。お春さんは「良三さんと玄叔さんだそうです」って答えた。」
「そのときは推薦が成功したと思って喜んだ。でも、世の中そんなにうまくいかないんだ。柏軒先生は京都で亡くなって、俺が推薦した志村は塩田と一緒に病床に付き添って、後始末をしただけだった。」

原文 (会話文抽出)

「わたくしは柏軒先生に再説することの難いのを知つてゐた。しかし志村を一行中闕くべからざる人物だと以為つたから、日を隔てて又先生を訪うた。其日はまだ払暁であつたので、先生は褥中にゐた。わたくしは枕元に進んで云つた。」
「先生、此間も一寸申しましたが、志村を京都へお連下さるわけにはまゐりますまいか。」
「なに、志村は今度は連れて往かぬと云つたぢやないか。かう云つて先生は跳ね起きた。顔には怒の色が見れてゐた。わたくしは又黙つて退いた。」
「しかし滞京中万一の事があつた時、先生と老中水野和泉守忠精との間を調停することの出来るものは、志村を除いては一人もない。わたくしは縦しや先生の怒に触れて破門の辱を受けようとも、今一度説いて見ようとおもつた。」
「わたくしは次の日に三たび先生を訪うて云つた。先生、まことにくどい事を申すやうでございますが、わたくしは是非先生に志村を連れて往つて戴きたうございますと云つたのである。」
「わたくしは先生の激怒を期待してゐた。然るに先生は暫くわたくしを凝視してゐて、さて云つた。ひどく熱心だな。まあ、どうにかなるだらう。わたくしは拝謝して席を起つた。」
「わたくしは先生の出立の直前にお玉が池の家に往つて、そつとお春さんに問うた。お供は誰に極まりましたかと問うた。お連なさるのは良三さんと玄叔さんださうでございますと、お春さんは答へた。」
「当時わたくしは推薦の功を奏したことを喜んだ。しかし世事は逆覩すべからざるものである。柏軒先生は京都に客死して、わたくしの薦めた志村は僅に塩田と倶に病牀に侍し、又後事を営んだに過ぎなかつた。」

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