森鴎外 『伊沢蘭軒』 「御手教珍敷拝見仕候。御気色之事而已案じゐ…

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青空文庫図書カード: 森鴎外 『伊沢蘭軒』

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「ご指導ありがとうございます。ご体調はどうなのかと思ってましたが、足は悪くないけど気分はいいとのこと、安心しました。円山へ引っ越されたそうで、それはそれはご安堵のことですね。奥様もさよさんも、少しは落ち着けるでしょう。六右衛門さんや古庵さんが時々お見えになるそうで、それほど寂しくもないとのお便り、嬉しく拝見しました。俳句を見せていただき、感動しました。売家の句は素晴らしいですね。私も何か詠んでお返ししたいのですが、なかなか思い浮かばず。別便で手紙を送りましたが、まだ届いていないそうですね。本来は帰国後すぐにお知らせすべきところ、連日来客が続き、そのうち体調を崩してしまい、夏の間ずっと不調、秋になっても寒さがこたえて延び延びになってしまいました。花瓶はいつもそばに置いていて、今日は杜若を二輪生けています。四季咲きなので」
「市翁の麦飯学者の話は、なるほどと思いました。麦飯でも学問があればいいのですが、麦飯学者もなかなかいないものです。毎日生徒の講釈に困っています」
「伊勢の川崎良佐と一緒に帰路につきますが、江戸へは二十回以上も行きました。最初の二、三回は早く帰りたいと思っていましたが、近頃はもう少しいてもいい、住んでもいいと思うようになりました。私もまた行けば、その気になりそうですが、何せもうすぐ七十という年齢ですし、生まれつき病弱なので、どうにもなりません」
「帰路の詩もいくつかあるのですが、人に預けていて、この便には間に合いませんでした。後ほど差し上げます。前回は少しお送りしたかと思いますが、定かではありません」
「狐は時々見られますか。千蔵が言っていた狐のことです。千蔵も広島で小さな塾を開いているようです。帰国後は音沙汰がありません。源十の直卿は相変わらずです。源十は軽い性格で、平気で嘘をつきますが、直卿はいつもどおりです。主計はとうとう矢代君にお願いするそうですね。ありがたいことです。八月には帰ると言っていました。船で沖を渡り、もう柳里あたりに落ち着いていることでしょう。服部子はどうですか。この人はもともとよく来てくれるはずですが。この後は六右衛門さんや古庵さんなどへも宜しくお伝えください。近作を二、三、拙いものですが、近況報告のために写してみました。小山の西遊はいかがですか。十月十日。菅太中晋帥。伊沢辞安様」
「歯痛がだんだんひどくなり、今は豆腐以外食べられません。お酒は後でツラいのですが、暇つぶしのために時々飲んでいます」

原文 (会話文抽出)

「御手教珍敷拝見仕候。御気色之事而已案じゐ申候処、足はたたねど御気分はよく候由、先々安心仕候。円山へ御移之由、これは御安堵御事、御内室様もおさよも少々間を得られ可申と奉存候。六右衛門、古庵様など折ふし御出之由、かくべつ寂寥にもあらざめりと悦申候。高作ども御見せ、感吟仕候。売家の詩は妙甚候。拙和ども呈申度候へ共、急に副し不申候。とくに一書さし出候へども、いまだ届不申候よし、元来帰国早々可申上候処、日々来客、そのうちに不快(此一字不明)になり、夏中不勝、又秋冷にこまり申候而延引如此に御坐候。花瓶は日々坐右におき、今日は杜若二りんいけゐ申候。四季ざき也。」
「市翁麦飯学者之説、歎服いたし候。麦飯にても学者あればよけれど、麦飯学者もなく候。日々生徒講釈などこまり申候。」
「伊勢之川崎良佐、帰路同道、江戸へ二十度もゆき、初両三度ははやくいにたい/\とのみおもひ候。近年にては今しばらくもゐたし、住居してもよしと思候と物がたり候。私もまた参たらば、其気になり可申やと存候へ共、何さま七十に二つたらず、生来病客、いかんともすべからず候。」
「帰路之詩も少々有候へ共、人に見せおき、此便間に合不申候。あとよりさし上可申候。先便少々はさし上候やとも覚申候が、しかと不覚候。」
「狐は時々見え候や承度候。千蔵がいふきつね也。千蔵も広島に小店をかり教授とやら申ことに候。帰後はなしとも礫とも不承候。源十直卿仍旧候。源十軽浮、時々うそをいふこと自若。直卿依旧候。主計はとう/\矢代君へ御たのみ被下候よし、忝奉存候。八月には帰ると申こと。舟にて沖をのり、もはや柳里(此二字又不明)へ落著と奉存候。服部子いかが。これこそもとよりしげく参らるべし。御次に六右衛門、古庵様などへ、一同宜奉願上候。近作二三醜悪なれども近況を申あぐるためうつさせ候。小山西遊はいかが。十月十日。菅太中晋帥。伊沢辞安様。」
「歯痛段々おもり、今は豆腐の外いけ不申候。酒はあとがあしけれど、無聊を医し候ため時々用候。」

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