宮本百合子 『道標』 「そう云えば、ほんとにあのひとは感動したと…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「そう言えば、本当にあの人は感動したと言えるくらいの顔してた」
「私、今、わかった気がするわ。あの人、もしかしたら、あの畑のスイカを、パリのムロンと同じものだと思ったんじゃないかしら。夕方だったし……」
「なるほどね」
「ここじゃ、鶏ってかなりの贅沢でしょう?ロシアではもっと日常的に食べてるわ。丸焼きの鶏をあの人お弁当に入れてて、それもロシアの田舎風の豊かさだと思ってた上に畑ではデザートのムロンがゴロゴロしてるって、心を打たれたんじゃないかしら。――無理もないわねえ。ソ連の豊かさ、たっぷりさ。それと同じくらい厳しい欠乏。毎日、そのコントラストだから」
「ああ、私、あの女性が、今フランスが先陣切って反ソ十字軍に加わってないことを願ってるわ」
「私たち、あの女性って、どこでしたっけ、あの乗換駅。――あそこで別れたでしょう。もし、あの女性があとでムロンを買って食べようとして、ただのスイカだったとわかって、ひどくがっかりでもしたら、危険だわ。ロシアもこれだから幻滅だなんて思うかもしれないし。共産主義の国は、なんて、天気が悪いこともスイカのことも、何からでも悪口を言うんだから」
「ムロンはムロンだろう?」
「そうかしら。でもスイカは水分が多いわよ」

原文 (会話文抽出)

「そう云えば、ほんとにあのひとは感動したと云えるぐらいの顔つきだった」
「わたし、いま、わかったようだわ。あのひと、もしかしたら、あの畑の西瓜を、パリのムロンと同じものだと思ったんじゃないかしら。夕方だったし……」
「なるほどね」
「ここじゃ、鶏って相当の贅沢でしょう? ロシアではもっと日常性をもっているわ。丸やきの鶏をあのひとお弁当にもっていて、それもロシアの田舎風のゆたかさと思っていた上に畑ではデザートのムロンがごろごろしているって、心をうたれたのじゃないかしら。――無理もないわねえ。ソヴェトのゆたかさ、たっぷりさ。それと同じくらいきびしい欠乏。毎日、そのコントラストだから」
「ああ、わたし、あの女のひとが、いまフランスが先棒の反ソ十字軍に加っていないことを希望するわ」
「わたしたち、あのひとは、どこでしたっけ、あの乗換駅。――あすこでわかれちゃったでしょう。もし、あのひとがあとでムロンを買ってたべようとして、ただの西瓜だったとわかって、ひどくがっかりでもしようものなら、危険だわ。ロシアもこれだから幻滅だなんて思うかもしれなくてよ。共産主義の国は、なんて、天気のわるいことも西瓜のことも、何からでも悪口を云うんだもの」
「ムロンはムロンだろう?」
「そうかしら。でも西瓜は水がつくもの」

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