GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』
現代語化
「西川光二郎というような人が、ここに書いてるなんて――不思議みたい。私の小さかった頃、西川光二郎と書いた白いたすきをかけた、長い髪の人が、よく街角で演説してるのを見ました。その西川光二郎なんでしょう?」
「そうだ。この男も最後はアナキストになって変な方向に行っちゃった。堺も、最初は、増税反対の社説を書いたり、幸徳秋水と共訳の『共産党宣言』の翻訳を載せたりして、逮捕されたりしてたけど、根がずる賢いから、俗物になっちゃった。残念だったのは、幸徳秋水だ。あいつは本物だったよ。日本で、最初に帝国主義ってこと言った男だ」
「ほら、これを見てよ。面白いでしょう、これが、あの有名な、レーニンが『イスクラ』で返事をしてきた平民新聞の『露国社会党に与える書』だ」
「黒岩涙香や内村鑑三なんかも、日露戦争には反対したことがあったんでしょう?」
「それは、平民新聞を出す前だよ、黒岩が万朝報で非戦論を主張してたのは。半年くらいで、へこたれて、青年会館で講演会をやる頃には、すっかり変わっちゃった」
「内村鑑三は? あの人はどうなったんでしょう?」
「あれは、大戦でだめになった」
原文 (会話文抽出)
「これが、日本ではじめて出た階級的な新聞さ。相当仕事をしたんだ。この発刊宣言をかいたのは幸徳秋水だよ」
「西川光二郎というような人が、ここに書いているなんて――不思議のようだわ。わたしの小さかった頃、西川光二郎と書いた白いたすきをかけた、髪の長い人が、何だか道ばたに立って演説しているのを見たことがあります。その西川光二郎なんでしょう?」
「そうだ。この男もしまいには無政府主義者になって妙なことになってしまった。堺も、はじめは、増税反対の社説をかいたり、幸徳秋水と共訳の『共産党宣言』の翻訳をのせて、ぶちこまれたりしていたが、根が小悧口者だから、俗化してしまった。もったいないことをしたのは、幸徳秋水だ。あの男はほんものだったね。日本で、はじめて帝国主義ということを云い出した男だ」
「ほら、これを見なさい。面白いだろう、これが、例の有名な、レーニンが『イスクラ』で返事をかいてよこした平民新聞の『露国社会党に与える書』だ」
「黒岩涙香や内村鑑三なんかも、日露戦争には反対したことがあったんでしょう?」
「それは、平民新聞を出す前のことだ、黒岩が万朝報で非戦論をとなえたのは。半年ばかりで、へこたれて、青年会館で演説会をやる頃には、すっかり豹変しちまった」
「内村鑑三は? あのひとは、もったんでしょう?」
「これは、大戦でだめになった」