宮本百合子 『道標』 「ああこりゃうまい!」…

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『道標』

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。 正しく現代語化されていない可能性もありますので、必ず原文をご確認ください。


青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「あ、これメチャクチャうまい!」
「この辺じゃ、ここにしかない味だね」
「実はちょっと自信もあったりして。いつか店を出すつもりなんで、ぜひ来てください」
「――うまいって思い出したけど、ちょっと体調悪くなると、女の手がめっちゃセクシーに見えるのってある?」
「耳がやたら気になったって話は、美術の歴史にあるよ」
「ゴッホだろ? 俺は手の話してるんだ、女の手なんだ」
「そんなやついるの?」
「都久井俊俊吉」
「あの人が、ちょっとおかしくなったときの話だけどね、普通の病人じゃないから、家族も医者も、いろいろ苦労したんだ。本人を不安にさせたり絶望させないように、とりあえず軽い神経衰弱みたいに言って、とにかく静養が一番、お腹は空かせちゃダメって説明したんだって。そしたら、本人は先生を信じちゃって、お腹が空いたら大変なことになるって思い込んでしまったみたいなんだ。今食べたばっかりなのに、すき焼きとか食べようかなって心配すると、本当に空いてくる気がしたんだって」

原文 (会話文抽出)

「ああこりゃうまい!」
「これだけにのませるところは、少くともここいらにはないだろう」
「実のところ万更自信がなくもありませんのよ。かえりましたら、いずれ店を出すことになりましょうから、どうぞよろしく」
「――うまい、で思い出したが、気がすこしどうにかなると、女の手がうまそうに見えるものだろうかね」
「耳が気になったという例は、美術史にある」
「ゴッホだろう? 俺の話は手なんだ、女の手なんだ」
「くった奴があるのか」
「都久井俊吉、ね」
「あのひとが、すこし頭の調子をおかしくしたときのことだがね、何しろ普通の病人じゃないから、家のひとも医者も、ひととおりならない苦心なんだ。本人を不安にしたり絶望させたりしないために、すこし強度の神経衰弱ということにして、静養が第一、まあ、おなかをすかせないようにするんですな、って云ったんだな。だもんだから、先生ひとすじに、おなかがすいたらもう駄目だと思いこんでしまったわけなんだ。いま食べたばっかりだのに、すきやしまいかと心配になると、たしかに空いて来た気がするんだ」

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『道標』


青空文庫現代語化 Home リスト