宮本百合子 『道標』 「素人筋」…

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『道標』

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。 正しく現代語化されていない可能性もありますので、必ず原文をご確認ください。


青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「素人」
「冷静に事実を見てる専門家の中には、相場が、自分勝手に上げすぎて潰れるだろうって警告してたやつもいたんだ。もう9月の時点で暴落の兆しが見えてたとき」
「配当金が25%なんて一度ももらったことないフランス人は、アメリカの不景気に巻き込まれたくないよね。少なくとも俺はそうだけど」
「フランスはフランの価値を下げてから経済がヨーロッパで一番安定してる。今はすぐ不景気に陥ることはないだろう。けど、アメリカでこんな大規模な不況が起これば、世界経済に影響しないなんてありえない」
「――絶対に?」
「フランスへの影響は、緩やかだったり、一番最後に出るかもしれない。でも、避けられないだろうね」
「ふーん。天然痘だって、最後に罹った奴の跡はいつも一番ひどいもんだ」
「本当にもう戦争だよ。戦争ってのは、いいことなんて一つも残さないもんだぜ」
「見てみなよ。戦争で儲けたのはアメリカだったんだ。好景気! 好景気!」
「あげくのはてに、今度は不景気! それで世界中をパニックにさせるんだ」
「でも、あんたの仕事は安定してるよ」
「庶民の生活に根ざした仕事は、いつも強い」
「そこなんだよ! 先生、アシャ」

原文 (会話文抽出)

「素人筋」
「事実を冷静に観察する専門家の中には、市場は、人工的に押し上げられて来た自身の重さで潰れるだろうと、警告していた者もあります。すでに九月に恐慌の波頭が見えたときに」
「一度も二割五分の配当なんかにあずかったことのないフランス人は、アメリカの恐慌のおつき合いを欲していません。少くとも、わたしはそうだね」
「フランスは、フランの切下げ以来ヨーロッパのどこよりも経済事情が安定している。いますぐ恐慌でかき乱されることはないでしょう。しかし、こんどの大規模なアメリカの恐慌が世界経済に影響しないということは、絶対にあり得ない」
「――絶対に?」
「フランスに対する影響は、ゆるやかに、或は一番最後にあらわれるかもしれない。だが、さけるということは出来ますまい」
「ふむ。天然痘だってね、最後にかかった奴のあばたはいつも深くのこるもんなんだ」
「ほんとうにみんな戦争ですよ。戦争ってものは、一つだっていいことはのこさないもんですさ」
「ご覧なさい。戦争で儲けたのはアメリカでしたよ。景気! 景気!」
「あげくに、こんどは恐慌! それで世界中を震い上らせるんです」
「しかし、お宅の職業は安全率が多いですよ」
「民衆生活の必要に結びついた職業は、いつもつよいです」
「そこですよ! 教授、アチヤ」

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『道標』


青空文庫現代語化 Home リスト