宮本百合子 『道標』 「何しろ、クロア・ド・フウなんか飛行機を三…

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「「何しろ、クロア・ド・フウなんか飛行機を30台も持ってるんだぜ。トラック、バイク、軽機関銃なんかは、どんだけ持ってることか」
「フランスのファシスト団体は、そういう面ではかなり組織されてるんだな」
「蜂谷さんってば――おかしいよ。フランスのファシズムを非難してるくせに、感心してるみたいな言い方をするんだもん」
「同感」
「蜂谷さん、いつのまにか自分がファシストになってたりして。それは勘弁だな」
「そういうわけじゃない。俺は、マルクス主義者が『反動だ』『ファシストだ』って決めつけるだけで、彼らのすごい力を知ろうとしないのは間違いだと思うんだ。第一次大戦の後、ファシズムが出てきたのは、それなりの理由があるんだから、そこを分析する勇気がなければ、いくら『自由のフランス』でも左翼は負けるよ」
「そりゃそうだろ。でも、大戦後の必然ってことで言えば、ソ連同盟ができた必然、世界中で社会主義が高まってきた必然もあるわけだ。少なくとも俺たちは、その2つのものの戦いを、犬の喧嘩みたいに見てるわけじゃないんだ」
「犬の喧嘩はひどいな」
「だって、どっちが強いか、どっちが勝つかみたいなところからしか見ないなら、結局、闘犬を見てるようなもんだよ。……闘犬だって、贔屓はあるでしょ。応援したい側があるわけで……」

原文 (会話文抽出)

「何しろ、クロア・ド・フウなんか飛行機を三十台も持っているんだからな。トラック、オートバイ、軽機関銃なんかは、どの位もっているか」
「フランスのファシスト団体は、そういう点では実に整備されているんだな」
「蜂谷さんたら――おかしい。フランスのファシズムを非難しながら、感歎しているみたいな云いかたをなさるんだもの」
「同感だね」
「蜂谷さん、ミイラ取りがミイラになるってことがありますよ。そんなの御免だな」
「そういうわけじゃない。僕は、マルクシストたちが、ひとくちに反動だ、ファシストだって片づけるだけで、彼らの必死な実力を知ろうとしないのは間違っていると思うんだ。第一次大戦のあと、ファシズムがおこって来ているには、それだけの必然があるんだから、そこを分析する勇気がなければいくら『自由のフランス』でだって左翼は敗北するね」
「そりゃそうでしょう。しかし大戦後の必然ってことを云えば、ソヴェト同盟が生れた必然、世界に社会主義がたかまって来る必然が一方にある。少くともわたしたちはね、その二つのもののたたかいを、犬のかみ合いを見物しているようには見ていないんです」
「犬のかみ合いは、ひどい」
「だって、ただ、どっちがつよいか、どっちが勝つかなんていうところからだけ見ているなら、結局、闘犬見物みたいなもんですよ。――闘犬にだって、ひいきはあるでしょう、かたせたい側っていうものが……」

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