宮本百合子 『道標』 「お父様も、御苦労さま」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

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「お父さんも、ご苦労様」
「うちの連中にも困ったもんだ。みんながそれぞれ勝手に言うことばかりで」
「和一郎にも困る」
「――ねぇ、お父さん、私にはわからないことがあるのよ。和一郎さんが、すごく不満そうにしてるの、知ってる?どうして、あんなやつ、連れて来なかったの?――2人っきりで来ればよかったのに――」
「そこだよ、俺の気持ちが誰1人わかってないんだ。タケイヨはついに決心して、どうしても死ぬまでに一度外国を見ておきたいって言うし、医者は健康を保証できないって言うし、俺も考えた。タケイヨにしてみれば、希望を失ったことは、将来の希望を奪われたのと同じなんだから、俺もこの際、思い切ってタケイヨの最後の希望を叶えてやろうって決めたんだ。何しろ医者がそう言うんだから、出かけるについては、万一の時の覚悟がいる。何かあった時、タケイヨは子供たちの顔を見たがるに決まってる。その時に後悔しても意味がないから、今回は、あらゆる犠牲を払っても、みんな連れて来たんだ」
「さもなければ、このような旅行は、計画そのものからして無理がある。でも、こういうことは二度とないことだし、俺としてはベストを尽くすことにしたんだ」

原文 (会話文抽出)

「お父様も、御苦労さま」
「うちの連中にも困ったもんだ。みんながてんでに勝手なことばかり云っている」
「和一郎にも困る」
「――ねえ、お父様、わたしには分らないことがあるのよ。和一郎さんが、うんと不平なの、御存じ? どうして、ああなんでしょう。あんなのに、つれていらっしゃらなくたってよかったのじゃないのかしら。――二人ぎりでいらしって――」
「そこだよ、おれの気持が誰一人わかっていないんだ。多計代はいよいよ決心して、どうしても死ぬまでに一度外国を見ておきたいというし、医者は健康を保障できないというし、おれも考えた。多計代にすれば保を失ったことは、将来の希望を奪われたと同じなんだから、おれもこの際、思いきって多計代の最後の希望を実現してやろうときめたわけだ。何しろ医者がそういうんだから、出かけるについては、万一のときの覚悟がいる。何事かあるとき、多計代は子供たちの顔を見たがるにきまっている。そのとき悔んでも意味をなさないから、こんどは、あらゆる犠牲をしのんで、みんな連れて来たんだ」
「さもなければ、こんどのような旅行は、計画そのものからして無謀さ。しかし、こういうことは二度とあるわけのものでもなし、おれとしてベストをつくすことにしたわけだ」

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