GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』
現代語化
「ないわけないだろ。1番ましなのそれしか持ってなかったんだから、入れてないわけないよ。ほら、見て」
「ほんとに入ってないのよ……どうしたのかしら」
「ぶこが詰め忘れたんじゃない?」
「出してくれ!」
「俺が出してないわけないじゃん。他に服ないし、忘れるわけないよ。ぶこのせいだ。詰めたちょっと。――どこでもいいから出してくれ――」
「無理だよ、そんなの」
「2人分を1つに入れてたのが悪かったんだわ」
「出してくれ!」
「あのブラウスがないと何着たらいいの」
「…………」
「もしかしたら、クローゼットに掛けっぱなしで来たんじゃない?――着ようと思って」
「そんなわけないでしょ!」
「自分はどういうの忘れたの?え?何にも忘れたものないじゃない。私だけ、汚いの着てるしかないなんて!」
「私のことなんかどうでもいいんだろ?いいよ!いつまでだってここにいてやるんだから!」
原文 (会話文抽出)
「どうしたのかしら、……ないわ」
「ないことあるもんか。あれはたった一枚のましなんだから、入れなかったはずありゃしない。見なさい」
「ほんとに入っていないのよ……どうしたのかしら」
「ぶこがつめたんじゃないか」
「出してくれ!」
「わたしが、出さなかったはずは絶対にないんだ。ほかに着るものがないのに、忘れる奴があるもんか。ぶこの責任だ。つめたのは君だもの。――どっからでも、出してくれ――」
「無理よ。そんなこと」
「二人分を一つに入れているのがわるかったんだわ」
「出してくれ!」
「あのブラウスがなくて何を着たらいいんだ」
「…………」
「もしかしたら、衣裳ダンスにかけっぱなしで来たんじゃないのかしら――着て来ようとでも思って」
「そんなことないったら!」
「自分のものは何を忘れて来た? え? 何一つ忘れたものなんかないじゃないか。わたしだけ、よごれくさったものを着て歩かなくちゃならないなんて!」
「わたしのことなんかどうでもいいと思っている証拠だ。いいよ! いつまでだってこうしてここにいてやるから!」