宮本百合子 『道標』 「あなた、作家でしたね、そうでしたね」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「作家さんって聞いたんですけど」
「そうだよ」
「どんなの書いてるの？――ラブストーリー？それとも短編？私、文学好きなんだよ。めっちゃ読む！」
「えっと、何書いてるの？」
「小説だよ」
「すごい！ロシア語じゃ読めないけど。本になってるの？」
「何冊か出してるよ」
「私にとって何冊出していようが同じよ――読めないんだもん」
「じゃ、そろそろ寝る時間かな」
「ちょっと待って！カワイイ子！（ちょっと！美人！）」
「ねえ、昨日結婚したの」

原文 (会話文抽出)

「あなた、作家でしたね、そうでしたね」
「ええ」
「どんなものをお書きなさるの？――ロマン？　それともラススカーズ（短篇）？　ああ、わたしは文学がすきですよ。何てどっさり読むでしょう！」
「ね、何をおかきなさるの？」
「小説（ポーヴェスティ）です」
「すばらしいこと！　ロシア語でかかれないのはほんとに残念です。本になっていますか」
「わたしはもう幾冊かの本を出版しています」
「私に幾冊本があろうと、あなたには同じことです――残念ながらあなたは読めないんだから」
「さあ、もうそろそろねる時間です」
「もうちょっと！　可愛いひと！（ミヌートチク！　ミーラヤ！）」
「きいて下さい、わたしはゆうべ結婚したんです」

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