宮本百合子 『道標』 「こんなにしていると、日本にある自分たちの…

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現代語化

「こうやってると、日本の生活が信じられないくらいに思えてくる」
「外国に出ると本当にわかるんですね」
「故郷のことですか?」
「あまりに別世界ってことです」
「伝統的なのは舞台だけじゃないんですよ。歌舞伎役者の私生活の隅々までがそれでいっぱいなんだ…」
「変えられませんか?」
「難しいですね」
「自分一人、そこから抜け出すならともかく、あの中にいてどうにか変えようとしても、それは無理です」
「仮にあなたがそこを抜けたら、どうなるんですか?」
「そこなんです、問題が」
「まず周りが許しませんよ」
「周りって…奥さんですか?」
「奥さんも許さないでしょうけど、親戚がね。歌舞伎の世界では、親戚関係ってすごく大事なんです。義理もあるし」
「もう一つ自分として問題があるんです。僕は舞台は捨てられない。これだけはどんなことがあってもできません。俳優としての技術の蓄積もあります。やめてしまえば簡単ですけどね。自分を成長させ、日本の演劇も発展させる舞台って、どこにあるでしょう」
「いきなり築地でもないだろうし…」
「そこなんです」

原文 (会話文抽出)

「こんなにしていると、日本にある自分たちの暮しかたが信じられないほどです」
「外国へ出て見るとほんとにわかるんですねえ」
「ふるさがですか?」
「あんまり別世界だってことですね」
「伝統的なのは舞台ばかりじゃないんですからね、歌舞伎の俳優の私生活の隅々までがそれでいっぱいなんだ……」
「かえられませんか」
「むずかしいですね」
「自分一人、そこから、ぬけてしまうならともかくですが、あの中にいて何とか変えようったって、それはできるこっちゃありません」
「かりに、あなたがそこをぬけるとしたら、どういうことになるんです」
「そこなんですね、問題は」
「まず周囲が承知しませんね」
「周囲って――細君ですか」
「細君も不承知にきまってるでしょうが、親戚がね。歌舞伎の世界では、親戚関係っていうのが実に大したものなんです――義理もあるし」
「もう一つ自分として問題があるわけなんです。僕には舞台はすてられない。これだけはどうあっても動かせません。俳優としての技術の蓄積ということもあります。ただ、やめちまうというなら簡単でしょうがね。自分を成長させ、日本の演劇も発展させる舞台っていうものは、どこにあるでしょう」
「いきなり築地でもないだろうし……」
「そこなんです」

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